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2023 年度 実施状況報告書

濃縮骨髄液を用いた良性骨腫瘍切除後の再建法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K16657
研究機関山口大学

研究代表者

三原 惇史  山口大学, 医学部附属病院, 助教 (60880177)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワード骨癒合 / 骨リモデリング / 副甲状腺ホルモン / 抗スクレロスチン抗体 / 3D-FEM
研究実績の概要

本研究の最大の目的は、骨欠損における骨癒合・リモデリングを促進させる有効な手段を開発することであり、その手段として濃縮骨髄液(BMAC)に注目し、良性骨腫瘍の骨欠損に対してBMACの有効性を臨床試験によって検討する予定であった。しかし、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」第3種への申請を行っていたが、最終的に許可がおりなかった。また、使用予定であったテルモ社の濃縮骨髄液専用の遠心分離機である『スマートプレップ』の生産中止が決定し、本邦での機械の承認が取り消され、BMACを用いた研究が困難となった。
そこで、骨癒合・リモデリングを促進させる他の手段の開発を目的として、2種類の骨形成促進薬に注目した。1つは副甲状腺ホルモン製剤(PTH製剤)であり、もう1つが抗スクレロスチン抗体である。PTH製剤は骨芽細胞(骨を作る細胞)の前身となる未熟な前骨芽細胞や幹細胞を増やすのと同時に、骨芽細胞へ分
化を促す一方で、抗スクレロスチン抗体は未熟な細胞は増やさないが、強力に未熟な細胞を骨芽細胞への分化させる効果があることが分かっており、PTH製剤と抗スクレロスチン抗体の組み合わせは理論上、骨癒合・リモデリングに有利に働くと考えられる。
両方の薬剤を同時にヒトへ投与することは医療保険の観点より認められていないため、骨折モデルのマウスを用いた動物実験で両薬剤による有効性を検討している。片側脛骨の骨折モデルを作成し、2週間の薬剤投与期間を設け、PTH単独群、抗スクレロスチン抗体単独群、両薬剤併用群、一方の薬剤を1週間投与した後にもう一方の薬剤を1週間投与した群に分けた。力学試験、画像評価、組織学的評価を行い、骨癒合、骨リモデリングが最も進む投与方法を探求する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初予定していた濃縮骨髄液を用いた臨床研究は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」第3種への申請を行っていたが認可をいただけず、その間に使用機械の本邦での承認も取り消されたため、BMACを用いた臨床研究は困難となった。そのため、骨癒合・リモデリングを促進させうる代替案を検討し、副甲状腺ホルモン製剤、抗スクレロスチン抗体の組み合わせによる骨癒合促進効果について、動物実験によって実験を行っている。現在、力学試験、画像評価の結果は出ており、2024年2月のOrthopaedic Research SocietyのAnnual Meetingにてその成果を発表した。
引き続き、動物実験を進めていく一方で、当初予定していた骨腫瘍によって骨溶解・骨欠損を起こした骨の強度を、3D-FEMモデルを用いてコンピュータシミュレーションを行う実験については、現在、良性骨腫瘍患者の医用画像を収集中である。予定していたよりも良性骨腫瘍の症例が少なく、医用画像の収集に苦慮している。骨強度の正確な評価が必要という考え方では似た病態となる転移性骨腫瘍の症例の医用画像を用いた3D-FEMモデル作成も検討している。

今後の研究の推進方策

引き続き、骨癒合・リモデリング促進を目標とした代替案の副甲状腺ホルモン製剤と抗スクレロスチン抗体を組み合わせた治療法の有効性を求めるために、現在行っている動物実験を進めていく予定である。動物実験では、骨折後2週の段階での力学的試験とマイクロCTによる画像評価は完了しており結果が出ている。この結果については2024年2月のOrthopaedic Research SocietyのAnnual Meetingにてその成果を発表した。
骨折後3週のモデルについても実験を行ったが、2週の結果と大きく変わらない結果であり、骨折後2週の結果のみで発表や必要に応じて追加の実験を行っていく。
今後は、この結果を裏付けるため、またなぜそのような結果となったかについて、その背景を探るため、今後は組織学的評価を行う予定であり、現在組織標本の作製を行っている。
骨腫瘍(良性・転移性)によって骨溶解・骨欠損を起こしている骨の医用画像の収集を続け、それらの医用画像を元に3D-FEMモデルを作成し、コンピュータシミュレーションを用いて骨強度を評価し、どの程度の骨溶解・骨欠損でどの程度の力学的強度の低下が見込まれるかについて知見を得ることで、患者のADL指導につなげることができると考えている。

次年度使用額が生じた理由

BMACを用いた臨床研究を行うことができず、研究計画に変更が生じ、動物実験を行っているため、予定より使用額が少なくなった。3D-FEMを用いた骨腫瘍症例の力学的解析もまだ行えていないため、次年度へ持ち越すこととなった。また、学会参加のための支出も予定より少なかったことが挙げられる。
次年度の使用計画であるが、3D-FEMモデル作成、学会参加のための交通費、現在行っているPTHと高スクレロスチン抗体を用いた骨癒合促進の動物実験において追加実験が必要となった際に使用していく予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Effect of Sequential Therapy of Parathyroid Hormone and Sclerostin Antibody for Fracture Healing in Mice2024

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Mihara, Kiminori Yukata, Tetsuya Seto, Kazuya Uehara, Takashi Sakai
    • 学会等名
      Orthopaedic Research Society Annual Meeting
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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