骨軟部肉腫(以下、肉腫)に対する養子免疫療法の開発は、癌腫と比べて進展しておらず、抗原特異的なT細胞受容体(TCR)遺伝子を導入したT細胞輸注療法は一部の肉腫に対してしか適応していない。肉腫に対する効果的な遺伝子改変T細胞療法の実行化に向けて、肉腫浸潤Tリンパ球(TIL)由来の肉腫反応性TCRが認識する抗原を同定するための新たな解析プラットフォームを開発する。 平滑筋肉腫2症例の切除検体からTILを分離して単細胞レベルでのTCRレパトアと遺伝子発現解析を行なった。いずれもTCRのクローナリティが高いT細胞が存在し、遺伝子発現パターンからそれらは腫瘍を認識している可能性が高い細胞集団であった。複数のTCRをレトロウイルスベクターへサブクローニングし、TCR遺伝子導入T細胞(TCR-T細胞)を各々作成した。TCRの導入効率は30-50%であった。自家腫瘍細胞株を樹立できなかったため、肉腫細胞からRNAを抽出して作成したcDNAライブラリーを患者のHLAを過剰発現させたHEK293T細胞に遺伝子導入し標的細胞を作成した。 TCR-T細胞と標的細胞を共培養して免疫応答を確認しているが、陽性反応は検出できていない。今後は、cDNAライブラリーのプール数を増加し、さらにTCR-T細胞の種類も増やす。陽性反応が出たら、抗原候補を単一遺伝子へ絞り込み、エピトープの同定を行う。そして、TCRの抗腫瘍効果の検討へと繋げる予定である。
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