研究実績の概要 |
現在までのところ、脂質代謝を中心に研究を行っている。脂肪酸は様々な細胞内生理機能に関わっている。多価不飽和脂肪酸は複数の酵素により代謝され生理活性物質として機能する。その過程においてLong-chain-fatty-acid-CoA ligase 4 (ACSL4) やLysophosphatidylcholine acyltransferase 3 (LPCAT3), Lipooxygenase (ALOX) が触媒として働き、過酸化脂質を産生することから、ACSL4, LPCAT3, ALOX5, 12, 15はferroptosisの制御因子である。そこでACSL阻害剤であるTriacsin CやALOX阻害剤であるBaicaleinを脂肪肉腫株および非がん細胞株や上皮性がん細胞株に作用させたところ脂肪肉腫でのみ細胞死が生じた。現在それら細胞株でACSL4, LPCAT3, ALOX5, 12, 15の発現量を測定する準備を行っている。その結果にもよるが、特に脂肪肉腫では脂質代謝制御因子であるPPARγの発現が亢進しており他の肉腫と異なり脂質代謝が異なる可能性があるという仮説が阻害剤での実験結果からは想定される。次の実験としてTriacsin CやBaicaleinとferroptosis誘導剤であるRSL-3やML162との併用実験を行い相乗効果があるのかを評価する予定である。鉄代謝やミトコンドリア代謝については以前からの研究を継続して進行できている。ミトコンドリア代謝についてはSHARPINとの関連が明らかになってきており論文化を進めたい。
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