注目した細胞内代謝のうち、鉄代謝、メチオニン代謝についてまず述べる。鉄代謝についてはdatabase上ではトランスフェリンレセプター1(TFRC)の発現量と予後のとの相関が認められたがそのタンパク発現量とferroptosis感受性については用いた細胞株内では認められなかった。また細胞内2価鉄イオン含有量とferroptosis感受性との関連も明らかでなく、鉄依存性細胞死であるferroptosisであるが、単純に鉄含有量が多いからといってferroptosisが誘導されるといった直線的な関係性は認められなかった。メチオニン代謝についても本研究ではmethylthioadenosine phosphorylase (MTAP)に注目して研究を行ったが、MTAP欠損の有無とferroptosis感受性との間に関連性を確認できなかった。このことからフェロトーシスは鉄依存性細胞死であるが、細胞内に鉄毒性を除去する機構が多方面で機能していることが推察される。 脂質代謝については脂肪肉腫細胞株での解析を行った。ASCL阻害剤やSCD1阻害剤により細胞死を誘発したがferroptosis誘発剤との併用では相乗効果を示さず、むしろASCL阻害剤との併用ではferroptosisが抑制された。このことから脂肪代謝が亢進していることがferroptosis誘発には有利に働くことが考えられた。 最後にミトコンドリア代謝であったが、ミトコンドリア活性を制御するPGC1aがSHARPINの下流でNF-kBおよびPRMT5を介して負に制御されているが、PGC1aが亢進してミトコンドリア活性が増加しているとferroptosisは抑制されておりこれにはPGC1aを介したBNIP3L/NIX-mediated mitophagyが関与していることが示唆された。
|