研究課題/領域番号 |
21K16673
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
濱崎 雅成 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (60880044)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 変形性関節症 / 軟骨細胞 / 軟骨下骨 / 骨細胞 |
研究実績の概要 |
変形性関節症(osteoarthritis, 以下OA)において、軟骨下骨の骨硬化や骨肥厚などがみられ、軟骨下骨の骨代謝変化が関連している。一方、OAでみられる軟骨下骨の骨代謝変化がなぜ生じるのか、その詳細な分子機序は不明である。骨細胞は、骨組織中に含まれる細胞の大多数を占め、機械的、生物学的、化学的刺激に反応するセンサーとしての機能を有し、周囲の骨芽細胞、破骨細胞との相互作用の元、骨代謝の維持に寄与する。近年、軟骨下骨の骨代謝は、軟骨との相互作用によって維持されていることが報告されているが、軟骨と軟骨下骨に存在する骨細胞との相互作用については、未だ報告がない。そこで我々は、変性軟骨細胞が骨細胞機能を障害することで、軟骨下骨の骨代謝変化が生じ、軟骨変性を誘導するという仮説の元、本研究を開始した。 最初にOA軟骨細胞と骨細胞との相互作用を解析するため、軟骨細胞-骨細胞共培養刺激システムを作成し、その影響を解析した。24-well plateに播種したマウス骨細胞セルラインMLO-Y4を IL-1β刺激軟骨細胞と共培養すると、骨細胞の総数が減少した。また、同骨細胞において、E11/gp38の発現が低下しており、β-cateninの発現減弱およびRANKL発現が亢進していた。これらの結果から、OA軟骨細胞が液性因子を介して骨細胞のWnt-β-catenin signalingを減弱させ、骨吸収を亢進させるという可能性が示唆された。OA早期の軟骨下骨において、骨リモデリング亢進による相対的骨吸収亢進がみられることから、上記反応はOA早期にみられる軟骨下骨の骨代謝変化に関連している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス、ヒト軟骨下骨からの骨細胞の採取法および培養方法確立に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
最初に、骨組織より単離した骨細胞と軟骨細胞との共培養によって、上記と同様の反応がみられるかどうかin vitroで検証する。その後、変性軟骨細胞由来液性因子による骨組織全体に及ぼす影響をEx vivoで解析する。さらに、In vitro共培養システムを用いて、変性軟骨細胞由来液性因子によって骨細胞に生じる変化の詳細を、網羅的遺伝子解析によって検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は以下の実験を計画している。最初にマウスおよびヒト骨組織より単離した骨細胞と軟骨細胞との共培養実験(In vitro)および変性軟骨細胞液性因子が骨組織に及ぼす影響の解析(Ex vivo)を行う。次に、上記In vitro共培養モデルで得られた骨細胞に関するRNAシークエンスを用いた網羅的遺伝子解析(In vitro)を行う。網羅的遺伝子解析で得られた結果から、軟骨下骨骨細胞中にみられる新規因子を同定し、その軟骨変性に及ぼす影響を解析する。
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