研究課題
近年、軟骨との相互作用により軟骨下骨の骨代謝が調節されているとの報告が散見されるが、軟骨の主要細胞成分である軟骨細胞が骨細胞の機能に及ぼす影響は知られていない。本研究では、軟骨細胞の異化は軟骨下骨の骨細胞の機能低下を及ぼし、初期の変形性関節症(OA)に見られる軟骨下骨の骨代謝変化をもたらすという仮説をもとに、OAにおいて軟骨細胞が軟骨下骨の骨細胞機能に及ぼす影響を解析することを目的とした。IL-1βで刺激したマウス軟骨細胞とマウス骨細胞セルラインを共培養し、軟骨細胞と骨細胞との相互作用を評価した。共培養後、骨細胞に生じた変化をCristal Violet染色、ウエスタンブロッティング(WB)、qRT -PCRおよびRNA -seqを用いて解析した。その結果。IL-1β刺激軟骨細胞と共培養した骨細胞群(刺激群)では有意に骨細胞数が減少していた。またqRT-PCR及びWBの結果、刺激群は骨細胞関連マーカーの発現が減少し、RANKLの発現量が有意に増加した。RNA-seqによる遺伝子発現解析では、刺激群で炎症関連遺伝子が多く発現していた。その中でpyroptosisに関連するNOD like receptor signaling pathwayに着目し、pyroptosisに関連する遺伝子発現が上昇していることを確認した。これらの結果から、変性した軟骨細胞は骨細胞のPyroptosisを誘導し、初期OAに見られる骨代謝変化に類似した、周囲の骨脆弱性を誘導する可能性が示唆された。今後は、Pyroptosisを引き起こすGasdermin Dのコンディショナルノックアウトマウスを作成し、膝前十字靭帯を切断した変形性関節症モデルを用いて、OAの発症・進行に関する検証を行う予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度はin vitiroで軟骨細胞とマウス骨細胞セルラインとの相互作用について検証を行った。RNA-seqによる網羅的遺伝子解析を行い、OA治療のターゲットとなり得る標的遺伝子を同定した。
Pyroptosisに関与するGasdermin Dのコンディショナルノックアウトマウスを作成し、膝前十字靭帯を切断した変形性膝関節症モデルを用いて、野生型マウスとの比較検討する研究を予定している。また 、現在のデータは骨細胞セルラインを用いた結果であるが、今後はマウスから単離した骨細胞を用いて同様の結果が得られるかどうかを確認する予定である。
昨年度に行った網羅的遺伝子解析の結果が出るまでに時間を要し、以降の実験は次年度に計画している。網羅的遺伝子解析で得られた結果から、Pyroptosisに関与するGasdermin Dのコンディショナルノックアウトマウスを用いて、変形性関節症の発症・進行に関して野生型マウスとの比較検討を行う研究を予定している。また、マウスおよびヒト骨細胞から単離した骨細胞を用いてin vitroの結果を検証する。
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