研究課題/領域番号 |
21K16678
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
松村 恵津子 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 特任助教 (30831854)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 滑膜 / 軟骨再生 / 増殖 / IL1b / Erk1/2 / CD121a |
研究実績の概要 |
間葉系幹細胞(MSC)を用いた関節軟骨の再生医療の実現には、移植に用いる自家MSCを安全に、且つ十分量供給できるプロトコールを確立することが必須である。しかしながら、患者由来の細胞は増殖性に個人差があるため、移植用細胞の数を常に十分量確保できるとは限らないのが現状である。これまでの先行研究では、患者膝滑膜より調製したMSCは、IL1b受容体(CD121a)陽性細胞分画は約5%程度と低いにもかかわらず、in vitroにおいてIL1bが強力な増殖因子として作用することを示した。更に、IL1bはMSCの多分化能に影響しないことを示した。これらの結果は、IL1bが関節腔内において炎症反応を惹起するカタボリックな側面に加えて、組織修復のプロセスを促進するアナボリックな側面も合わせて有する可能性を示している。 IL1bによるMSC増殖促進効果は血清の存在下でのみ観察されたことから、血清中に存在する他の増殖因子の作用を増強する働きがあると考えられた。細胞増殖に関連する細胞内Erk1/2のリン酸化を検証したところ、血清刺激によりErk1/2のリン酸化は早期(5~10分)に一過的に観察されるが、IL1bはその時間を倍以上(5~30分)に延長させることが明らかとなった。この現象はMSC特異的であり、他の細胞株(HEK293FT等)においては、刺激後早期の一過的なリン酸化のみ観察された。MSCにおいて観察される遅延型Erk1/2リン酸化の分子機序を明らかとする目的で、免疫染色によるIL1受容体(CD121a)の局在解析を行ったところ、MSCではCD121aは細胞膜ではなく主に細胞質に局在することが明らかとなった。 以上の結果から、IL1bが血清中に存在する増殖因子の強力な補助因子として機能する機序として、細胞質におけるレセプターとリガンドの相互作用による新規の遅延型情報伝達様式の存在か示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IL1bによるMSC増殖の分子機序の解析に関して、これまで報告されていない新規知見を得た。すなわち、MSCにおけるIL1b細胞内シグナル伝達の特異性並びに、IL1b受容体の細胞内局在の特異性を明らかとした。これらの知見は現在投稿中である(in revision)。
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今後の研究の推進方策 |
1. MSCで選択的に発現しているIL1b受容体アイソフォームの生理機能解析。これまでの研究成果から、MSCで発現しているIL1b受容体は炎症性細胞に比べて短鎖のペプチドであることが明らかとなった。通常型並びにMSC型IL1b受容体アイソフォームの生理機能の差を検証するため、血液細胞(本研究ではJurkatを用いる)とMSCにShort並びにlong Formを過剰発現し、IL1bに対する応答性並びに標的遺伝子の違いを検討する。 2. MSCにおいてIL1b受容体と会合する共役因子の同定:IL1bによる細胞増殖促進効果は血清存在下でのみ観察されたことから、IL1b受容体が他の増殖因子受容体とComplexを形成して細胞内Erkのリン酸化状態を持続させている可能性が考えられる。この仮説を検証するため、MSCにおいてIL1b受容体と会合する因子の同定を試みる。具体的には、MSCにおいて血清とIL1bの同時刺激依存的にIL1b受容体に会合するタンパクを免疫沈降法により分離し、アミノ酸配列から遺伝子の同定を行う。さらに同定された遺伝子に対するSiRNAを用いて、MSCにおけるノックダウンを行い、IL1b刺激に対して不応答となる分子の同定を行う。これにより、MSCにおけるIL1b情報伝達経路のより詳細な解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度前半において得られた進捗をもとに、年度の後半において、論文作成を優先したために、残余の実験計画を少々後方にずらした。そのために必要試薬の購入代金に余剰が生じた。現在投稿論文はMinor Revisionで修正中である。繰越分は本年度の実験に必要な消耗品の購入資金に充当する。
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