研究課題
我々は、CT骨モデルを用いた骨・関節三次元解析システムを独自に開発し、関節キネマティクス研究や臨床へ応用してきた。その過程において、骨内部性状や軟骨構造などの質的要素を骨形態・関節動態と関連付けて評価することに成功した。病変部の質的評価は、疾患及び病態に応じた詳細な解析を可能とし、病期進行予測や病態把握につながる。この手法のさらなる応用を目指し、臨床において現在も診断・治療上の課題が山積する小児肘関節障害をターゲットとして以下の研究を行った。①上腕骨小頭OCDを対象とした骨性構造評価野球肘として知られる上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)では、病変部の空間的広がりや不安定性を評価して病期・病態を正しく把握することが治療方針決定に際して重要である。本研究では、CTデータから三次元骨モデルを作成し、軟骨下骨の三次元骨密度分布を含む骨内部の性状分析を行った。病変部の空間的広がりや軟骨下骨の骨密度の変化を定量化することにより、病状進行の程度や疾患の病態把握等に有用な情報が得られた。本結果は、病変部の治療に直結する病態把握や予後不良因子の解明の一助となる。②小児肘関節周囲骨折の軟骨病変を描出に向けた取り組み四肢関節疾患の画像診断において特に難渋するのが、軟骨の評価である。小児期の関節周囲の骨折では未骨化の軟骨成分にまで損傷が及んでいる場合があり、正確な診断に至らず不適切な治療が行われ、成長障害などの重度後遺症を残すことがある。本研究では、小児肘関節周囲骨折の軟骨病変を描出することを目的に、軟骨構造の三次元化を行った。まずは、実験検体(カダバー)を用いてMRIから三次元モデルを作成しその精度を検証したところ、高精度のモデルが作成できたことが確認できた。今後は、本手法を通常診療で用いられるモダリティへ拡張応用し、軟骨損傷部の画像識別能確立を図る。
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