研究実績の概要 |
エストロゲン欠乏による骨量低下は、閉経後女性のみならず思春期女性やアスリートにおいても問題視されており、骨折や疲労骨折の治癒遷延の大きな原因の一つとなっている。そこで申請者は、骨折修復への寄与率が高く、エストロゲン受容体α (ERα) の発現量が高い、骨髄間葉系幹細胞であるCxcl12 abundantreticular cells (CAR細胞) に着目し、CAR細胞による骨折治癒制御に対するエストロゲン作用を明らかにすることを本研究の目的とした。 まず、CAR細胞にGFPを発現するレポーターマウスを用いて骨折部位にCAR細胞が集積することを確認した。次に、CAR細胞特異的にタモキシフェン誘導型のCreを発現するマウス (Ebf3-CreERT2) とERα flox (ERαL2/L2) マウスを交配し、CAR細胞特異的ERα欠損マウス (Ebf3-CreERT2;ERαL2/L2, cKO) を作出し、骨折治癒過程を観察した。しかし、骨折治癒過程における仮骨形成量は、コントロールマウスとcKOマウスとの間に差を認めなかった。また、セルソーターを用いて、cKOマウスから単離したCAR細胞のマーカー遺伝子や分化マーカーの発現量も、コントロールとの間に差を認めなかった。 他方で、CAR細胞は骨芽細胞や脂肪細胞に分化することから、CAR細胞におけるERα遺伝子欠損を長期で誘導した場合の無処置の骨について解析を行なった。その結果、cKOマウスでは骨密度が有意に低下し骨髄脂肪量が有意に増加した。今後は、CAR細胞の恒常性維持に対するエストロゲン作用を検証していく予定である。
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