研究課題/領域番号 |
21K16689
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
上野 雅也 佐賀大学, 医学部, 病院助教 (20879811)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 骨再生医療 |
研究実績の概要 |
間葉系幹細胞(MSC)の骨再生医療への応用が注目される中、感染を伴う骨欠損部位への適用には抗菌性と骨形成能を併せ持つ新規治療法が求められている。本研究では、銀を含んだリン酸カルシウム(AgCP)の黄色ブドウ球菌に対する抗菌性を評価し、またAgCPをハイドロゲル中に封入し、MSCとともに骨形成への影響を評価した。 AgCP)は1wt%添加により培地に抗菌性を付与し、MSCへの細胞毒性は初期に一時的に認められたものの、28日後の骨形成能は損なわれなかった。AgCPから溶出した銀イオン濃度は浸漬直後最大となり、4週後でも少量ながら確認された。マイクロCTでは全群とも表層から石灰化領域が観察され、病理学的標本では添加したAgCP粉末は残存しており、石灰化領域が広がっていることが確認された。 AgCPから溶出する低濃度の銀イオンがMSCの分化・石灰化能力に影響しなかったことより、感染を伴う骨欠損部位への移植に局所的な抗菌性・分化性・骨形成能をもつ新規治療法への可能性を示した。 この結果は、感染を伴う骨欠損部位へMSCとAgCPを含んだハイドロゲルを移植することが、新たな治療法の展開へとつながる可能性を示している。具体的には、抗菌能と骨形成能を同時に持つ新たな基材が開発できるとともに、感染部位の骨欠損治療にMSCを利用する新たな道筋が開けることを示唆している。今後は、この成果を更に発展させ、クリニカルリーチを視野に入れた研究を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、予定していた研究スケジュールに対して若干の遅れが生じている。この遅れについて、二つの主要な要因が挙げられる。 第一の要因は、佐賀大学が持つICP(誘導結合プラズマ)原子吸光分析装置の修理が遅れたことである。この装置は、我々がAgCPから溶出する銀イオンの濃度を測定するために不可欠だが、この装置が故障し、さらにCOVID-19パンデミックの影響による部品不足により、修理が予想よりも時間を要した。結局再度検体を作成し、外部機関に評価を依頼し結果を得たが、銀イオンの溶出濃度の正確な評価が遅れ、それに伴いハイドロゲルスカフォールドの効果評価も遅れてしまった。 第二の要因は、私自身が大学病院勤務の医師として、COVID-19の第7波、第8波により、大きなエフォートを必要とされたことです。この結果、研究に費やすことができる時間が大幅に減少しました。医療現場での緊急事態に対応するとともに、可能な限り研究を進めるための時間を見つけることに努めてきましたが、それにもかかわらずスケジュールの遅れが発生してしまった。 それらにより1年間の延長申請を行った。 私の医療従事者としての役割が落ち着き、再び研究に専念できる時間を増やすことができることを期待している。
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今後の研究の推進方策 |
マウス骨髄由来の幹細胞とAg-HAを含む培地に細菌投与を行う、二次元の共培養のモデルでの実験はほぼ終了した。今後はそれを三次元細胞足場材料を使用して行っていく。この実験は順調に進行しており、近いうちに結果が得られることを期待している。
実験結果が得られ次第、それを基に学術論文を作成し、研究の成果を広く共有する。これにより、本研究が骨髄炎治療における新たな視点を提供し、医療分野に寄与することを期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
佐賀大学が持つICP原子吸光分析装置の修理がCOVID-19パンデミックによる部品不足から遅れ、AgCPから溶出する銀イオンの濃度の正確な評価が行えず、それに伴いハイドロゲルスキャフォールドの効果評価も遅れたことと、大学病院勤務の医師としてCOVID-19パンデミックにより大きなエフォートを必要とされたことで、研究に費やすことができる時間が大幅に減少し、予定していた研究スケジュールに対して遅れが生じたため。 検体を再度作成し外部機関へ委託して溶出銀イオンの測定を終え、現在は1年間の延長申請を行い、研究をおこなっている。COVID-19パンデミックの収束に伴い、私の医療従事者としての役割が落ち着き、再び研究に専念できる時間を増やすことができることを期待している。
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