骨粗鬆症に関連する骨折は寝たきりの原因となり,要介護,QOL低下,全身機能の低下,死亡率の増加を引き起こすため,骨粗鬆症の対策は超高齢社会の重要な課題である.とくに脊椎は骨粗鬆に伴う骨折の好発部位であり,骨密度の低下は,加齢に伴い増加する脊椎手術の成否にも大きく関わり,低骨量に関連する術後合併症は20-40%とされる.これらは患者QOLの低下や,医療経済への負担を招くため,「骨粗鬆症の克服」と「骨の健康の健全化」は重要な課題である.そこで,新しい骨粗鬆症治療のモダリティとして,安価・安全で組織修復効果がある「体外衝撃波療法(ESWT)」に着目し,骨粗鬆症モデルラットに対して,次の項目に関して研究をおこなってきた:①ESWTが骨芽細胞・破骨細胞へシグナルを伝える経路(転写因子)の解析 ② ESWTによる骨粗鬆椎骨の組織学的変化 ③ ESWTによる骨粗鬆椎骨の骨微細構造の変化(3次元構造解析) 本研究成果として,組織修復効果(骨量増加)が期待されるESWT照射プロトコルの候補を同定した.具体的には,モデルラットの第5腰椎へのESWT照射により,ヒト骨密度に相当する平面骨密度の増加がみられた(量的な変化).さらに海面骨密度や骨梁密度の上昇もみられた(質的な変化).また,ねじれや曲げ応力に対する剛性も高まる可能性が示唆された.その生体内メカニズムとして,骨芽細胞(古典的Wnt経路)および破骨細胞(RANKL経路)へのシグナル伝達経路の詳細に関して,今後 調査を継続していく. 骨粗鬆脊椎に対するESWTの研究は未開拓であり,本研究はESWTを用いた骨粗鬆症椎体骨折の保存治療や脊椎手術の補助療法の新規開発の先駆けとして,臨床応用への基盤研究となりうる.
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