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2022 年度 実施状況報告書

肉腫おける腫瘍関連マクロファージを標的軸とした新しい免疫療法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 21K16709
研究機関岡山大学

研究代表者

藤原 智洋  岡山大学, 大学病院, 助教 (80639211)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード肉腫 / 微小環境 / 腫瘍随伴マクロファージ / 免疫療法
研究実績の概要

本研究の目的は、肉腫に対するTAMを標的とした免疫療法の有効性および安全性を検討し、新しい治療戦略としてのレジメンを創出することである。肉腫は従来の化学療法、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などに抵抗性の強い組織型が多く、新しい治療法の有効性が認められれば、学術的だけでなく社会的な意義も大きい。
本年度は骨肉腫に対するTAM標的免疫療法の前臨床的有効性を証明し、そのメカニズムを解析した。使用した薬剤は、TAMの分化に重要なCSF-1/CSF-1R経路を遮断するPLX3397(CSF-1R阻害剤)である。これまでにLM8培養上清およびCSF-1を用いてC3Hマウス骨髄細胞(bone marrow-derived macrophage, BMDM)から肉腫TAMモデルを作製している。LM8の培養上清はCSF-1と同様にBMDMにおけるpERKを誘導しM2方向へ分化させ、CD45+CD11b+CD206+TAMを生成することを見出した。PLX3397によりBMDMのpERKは阻害されM1方向への分化が生じ、TAMの生存・遊走は双方とも阻害されることを確認した。この度、マウス骨肉腫高転移性株であるLM8を用い、同所移植マウスモデルではPLX3397(10 mg/kg/w)の全身投与により、明らかな毒性なく、腫瘍増大および肺転移形成は有意に抑制されることを確認した。免疫染色より、PLX3397により腫瘍微小環境におけるCD68陽性細胞(汎マクロファージ)およびCD206(M2型マクロファージ)の減少、CD8陽性T細胞の浸潤増強が確認された。また、FOXP3陽性T細胞(制御性T細胞)の減少も確認されたことから、CSF-1R阻害剤によりTAMだけでなくリンパ球を含めた細胞割合が変動し、微小環境における構成が抗腫瘍作用を示す環境へと変化することが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

肉腫各組織型のTAMに対するPLX3397の有効性・安全性および肉腫微小環境に与える影響の検討を、以下の内容で計画していた。(1)肉腫細胞由来サイトカインの網羅的解析と分泌サイトカインを用いたin vitro TAMモデルの構築(令和3年度)(2)In vitroにおけるPLX3397の肉腫細胞株および肉腫由来TAMモデルに対する有効性の検討(令和3-4年度)(3)In vivoにおけるPLX3397の有効性・安全性の評価および肉腫微小環境への影響の検討(令和3-4年度)。今年度は、骨肉腫に対し、(1)-(3)の内容を証明した。おおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

肉腫の他の組織型に対するPLX3397の有効性および安全性を明らかにする。また、PLX3397と従来の化学療法との併用療法の有効性および安全性を明らかにする。さらに、これらの効果がなぜ得られたかを、腫瘍微小環境に着目してフローサイトメトリーや免疫組織化学染色により評価する。これらの知見をもとに、実用化に向けたレジメンの構築を行い、どのタイミングで併用するのが最も強力な有効性が得られうるかを明らかにしていく。

次年度使用額が生じた理由

次年度に臨床検体解析(ゲノム解析)にあてる計画としている。これは本年度採取予定だった症例の診療が延期になったことが理由である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Cathepsin protease expression in infiltrative soft tissue sarcomas: cathepsin-K correlates with infiltrative tumor growth and clinical outcomes2023

    • 著者名/発表者名
      Fujiwara T, Zhang L, Chandler A, Sung S, Yakoub M, Linkov I, Hameed M, Healey JH.
    • 雑誌名

      Hum Pathology

      巻: 134 ページ: 30-44

    • DOI

      10.1016/j.humpath.2022.12.006.

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Alveolar soft part sarcoma: progress toward improvement in survival? A population-based study.2022

    • 著者名/発表者名
      Fujiwara T, Nakata E, Kunisada T, Ozaki T, Kawai A.
    • 雑誌名

      BMC Cancer

      巻: 22 ページ: 891

    • DOI

      10.1186/s12885-022-09968-5.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Geographic Access to High-Volume Care Providers and Survival in Patients with Bone Sarcomas: Nationwide Patterns in the United States2022

    • 著者名/発表者名
      Fujiwara T, Ogura K, Alaqeel M, Healey JH.
    • 雑誌名

      J Bone Joint Surg Am.

      巻: 104 ページ: 1426-1437

    • DOI

      10.2106/JBJS.21.01140.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 浸潤型軟部肉腫におけるCathepsin Proteaseの発現の臨床病理学的意義2022

    • 著者名/発表者名
      藤原智洋
    • 学会等名
      第81回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] Cathepsin Proteaseは浸潤型軟部肉腫における浸潤性発育および生存予後に相関する2022

    • 著者名/発表者名
      藤原智洋
    • 学会等名
      第37回日本整形外科学会基礎学術集会

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公開日: 2023-12-25  

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