研究課題/領域番号 |
21K16721
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
石松 哲郎 福岡大学, 医学部, 助教 (20881957)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 変形性膝関節症 / 高位脛骨骨切り術 / 腓骨神経麻痺 / 運動誘発電位 |
研究実績の概要 |
変形性膝関節症に対する手術的治療法である、膝周囲骨切り術は元来の膝機能を温存し、かつ活動レベルを改善し得ることから、年間約8000例と増加傾向にあり、その必要性は明白となっている。しかし、術中合併症として約4%に重篤な腓骨神経麻痺を生じる懸念があり、患者、そして医療者の手術の決断を鈍らせる重い足枷となっている。原因として、腓骨神経近傍のいずれかの手術手技に伴う医原性損傷ではないかとの仮説が出るに留まり、未だその原因は不明である。そこで、本研究の目的は、膝周囲骨切り術後に発生する腓骨神経麻痺の病態を、Motor-Evoked Potential(MEP)を用いて、術中神経電位の計測を行うことにより解明し、併せて予防法を開発することである。 本年度に、変形性膝関節症に対し、膝周囲骨切り術を施行した10例11膝を対象とし、MEPによる神経電位の計測を進めている。MEPは、麻酔下に、刺激電極は頭蓋運動野に設置し、記録電極は腓骨神経支配筋の前脛骨筋・腓骨筋、並びにコントロールとして母指球筋に設置した。神経電位の測定は、術前、腓骨筋をレトラクタ―にて牽引直後、前脛骨筋をレトラクタ―にて牽引直後、閉創後に施行した。各測定間で腓骨神経と正中神経各々における電位差を比較した。また、術後筋力低下の有無についても評を行った。 骨切りの際に、前脛骨筋を牽引した際に、腓骨神経の電位が落ちる傾向にあった。また、閉創後には神経電位は回復する傾向にあり、術後に神経麻痺を生じた症例はいなかった。そのため、前脛骨筋の牽引こそが原因ではないかと検討しているが、今後も引き続き、膝周囲骨切り術の症例のMEP計測を行い、症例数を目標の40膝まで増やす予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の目標では、変形性膝関節症に対し、膝周囲骨切り術を施行し、MEPを実施する症例数を1年ごとに20例ずつと想定していた。しかし、現在はコロナウイルスの影響等で、患者母数の低下にともない、実施症例数は11膝のみと、研究進捗としてはやや遅れているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、変形性膝関節症があり、かつ膝周囲骨切り術が必要な症例において、本研究への参加を促していく。現時点において、研究計画の変更はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた状況については、コロナウイルス感染拡大に伴い、国内、国際学会への参加が見合わせとなったことによる旅費への助成金使用が減少したこと。また、目標症例数である20例に到達せず、11例であったことから消耗品費の削減となったことがあげられる。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画として、症例数の増加に伴う消耗品費の増加への対応費並びに、学会での積極的な発表の際の旅費に助成金を使用する計画である。
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