研究課題
変形性関節症(OA)は従来軟骨の変性疾患とされてきたが、近年の疫学研究の結果から、滑膜病変も病態において重要な役割を果たしていることが明らかになった。OAにおける滑膜病変は関節置換を行って変性軟骨を取り除くことでほぼ完全に消退する。この事実から、滑膜病変の成立には変性軟骨から遊離する因子が関与していることは確実に思われる。このため本研究では軟骨組織に荷重を加えて遊離する因子の解析を行った。実際の解析は4種類の抗体アレイとiTRAQ labellingを用いた定量的プロテオーム解析およびルミネックスを用いた定量解析の3通りの方法で行った。抗体アレイでは生理活性を持つ複数の因子が対照軟骨に比してOA軟骨から多量に遊離することが明らかになった。また定量的プロテオーム解析では、OA軟骨から荷重によって軟骨基質を構成する複数のマトリクスタンパクが対照軟骨に比して多量に遊離することが明らかになった。その中にはfibronectin、cartilage oligomeric matrix protein(COMP)、fibronectin, llumican、fibromodulinなどalarminに分類される因子が複数含まれており、OA軟骨からこれらが遊離することで滑膜に炎症反応が誘発される可能性が示された。またルミネックスを用いた解析の結果、OA軟骨からは荷重によってVEGF-A、acidic およびbasic FGF、TGF-β1など血管新生作用を有する因子、OAの際に関節液中で上昇が報告されているcomplement protein C3aおよびC5a、さらにOAの痛みの発現において重要な働きをすると考えられるnerve growth factor(NGF)が対照軟骨に比して有意に多量に遊離することが明らかになった。
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