筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)の自然史におけるがんゲノム病理とがん免疫微小環境の経時的な変化を通してBCG療法抵抗性の機序を解明するために、昨年度はDNAおよびRNAシークエンス解析に備えたヒト膀胱癌FFPE検体42例(BCG療法ありの再発例は17例、BCG療法なしの再発例は25例)のリストアップ作業および患者・腫瘍背景に関する臨床情報の統合データベース作成を行った。 本年度はリストアップしたFFPE検体(同一患者で初発・再発ペア検体が解析可能な合計42例)において、まず組織のPD-L1染色を行った。PD-L1発現の程度についてはintensity score(IS)とproportion score(PS)の合計で評価し、PD-L1発現の部位については腫瘍部ならびに間質をそれぞれ評価した。腫瘍部のPD-L1発現に関しては、BCG施行前後で有意な差を認めなかったが、間質部はBCG施行群において有意に発現が亢進していた。このBCG施行群において、特にBCG投与からの再発期間が短い症例では、腫瘍部・間質部ともにPD-L1発現が有意に亢進していた。 DNAおよびRNAシークエンスに関しては、受託解析に係る契約手続きに時間を要しており、現在まで解析には至っていないが、リストアップしたFFPE検体を薄切後にHE染色を行い、腫瘍部をマーキングし腫瘍含有率を求めた上で、DNAおよびRNAの抽出を行った。
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