研究実績の概要 |
まず去勢抵抗性前立腺癌 (CRPC) や神経内分泌前立腺癌 (NEPC) で、治療抵抗性獲得に応じて変化する遺伝子群・クロマチン構造・ヒストン修飾・共因子を同定するため、次世代シーケンサー (NGS) を用いた網羅的解析を行なった。 自施設にて収集済みのデータと、公共データベースから利用可能なデータを用い、RWPE-1, LNCaP, LNCaP95, VCaP, 22Rv1, PC3, ならびにDU145のH3K27acに対するChIP-seq, FAIRE-seq, およびATAC-seqの結果を統合解析した。各細胞株に特異的なオープンクロマチン領域 (OCRs) を抽出したところ、その約9割がエンハンサー領域であることが示唆された。前立腺組織検体を用いたFAIRE-seq解析からも、前立腺肥大症, 未治療前立腺癌 (Primary PC), CRPCの3群における特異的OCRsを抽出し、細胞株での解析と同様の結果が得られることを検証した。 上記のOCRs近傍遺伝子の発現変動を確認するために、RNA-seq結果との統合を行なった。臨床組織検体のRNA-seq結果から、主成分解析を行なったところ、CRPCはPrimary PCと同様のクラスターに分類される群と、特異的なクラスターに分類される群の2群に大別されることを同定した。この2群間での遺伝子発現差異に着目し、その遺伝子近傍に存在するOCRsと上記で抽出したOCRsとを比較しMotif解析を行なったところ、各群を特徴づける転写因子候補を抽出した。 これらの転写因子や、その標的遺伝子ならびに分子経路について、機能解析や臨床的意義について追加検討を今後行う。
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