研究課題/領域番号 |
21K16727
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 広明 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (50813250)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 去勢抵抗性前立腺癌 / 転写因子 / エピゲノム |
研究実績の概要 |
去勢抵抗性前立腺癌 (CRPC) や神経内分泌前立腺癌 (NEPC) で、治療抵抗性獲得に応じて変化する遺伝子群・クロマチン構造・ヒストン修飾・共因子の同定、その機能解析や臨床的意義についての検討を行なっている。 自施設にて収集済みのデータと、公共データベースから利用可能なデータを用い、次世代シーケンサー (NGS) を用いた網羅的解析を行なった。正常前立腺・去勢感受性・CRPC・NEPC各モデル細胞株、ならびに、前立腺肥大症 (BPH)・未治療前立腺癌 (Primary PC)・CRPC各組織検体について、特異的オープンクロマチン領域 (OCRs) はエンハン サー領域により特徴付けされることが示唆された。これらのOCRs近傍遺伝子の発現変動を確認したところ、CRPCが Primary PCと同様のクラスターに分類される群と、特異的なクラスターに分類される群の2群に大別された。この2群間の遺伝子発現差異に着目し、各群を特徴づける転写因子候補を抽出した。 これらの転写因子、ならびにその標的遺伝子や下流分子経路の機能解析を行った。まず、CRPC細胞株に対してsiRNAによるノックダウン系を用いたスクリーニングを行い、増殖能と細胞周期の変化を確認したところ、転写因子X/Y/Zに対するノックダウンにより増殖能低下と細胞周期停止を認めた。またRNA-seqの結果から、これら転写因子の下流遺伝子群を抽出し、CRPC組織での発現上昇と合致する遺伝子群を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 Primary PCにおいてはアンドロゲン受容体 (AR) がマスター転写因子であることが知られているが、治療抵抗性獲得とともにAR阻害は臨床的には効果を失うこと が知られており、その分子機構の要因としてAR以外の転写因子による分子経路変容が存在すると想起される。 今回、CRPCならびにNEPCにおいて生じているゲノムワ イドな変化を統合的に検討し、OCRsと遺伝子発現変動との検討結果から、治療抵抗性獲得に寄与すると考えられる転写因子候補の抽出に至った。 これらの候補分子について、in vitro系での機能解析が進んでおり、今後の追加検討を介して臨床的意義へと結びつくことが期待される。本研究の目的である「CRPCやNEPCにおいて生じているエピジェネテ ィックな治療抵抗性獲得機構の同定」への見込みがあると考えられる。 そして、このようなエピゲノム変化に着目した治療抵抗性獲得機構の解明は、既存の治療戦略とは異なる視点からCRPCを層別化する事につながると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
同定した転写因子、ならびにその標的遺伝子や下流分子経路の機能解析を行う。in vitro系のデータから絞り込みが進んでおり、組織検体を用いて臨床情報との相関および妥当性を検証し、臨床的意義を 探求する。 具体的には、今後、マウスモデルを用いたin vivo系での検証や、公共データベースに登録されている情報との比較解析を行い、妥当性や正当性を確認する。また、自施設での臨床情報や、公共データベースで利用可能な臨床情報とも照会し、治療抵抗性や予後予測因子としての可能性、ならびに、新規治療標的としての可能 性といった臨床的意義についても検討する。
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