去勢抵抗性前立腺癌 (CRPC) や神経内分泌前立腺癌 (NEPC) で、治療抵抗性獲得に応じて変化する遺伝子群・クロマチン構造・ヒストン修飾・共因子の同定、そ の機能解析や臨床的意義についての検討を行なってきた。 自施設にて収集済みのデータと、公共データベースから利用可能なデータを用い、次世代シーケンサー (NGS) を用いた網羅的解析を行なった。正常前立腺・去勢感受性・CRPC・NEPC各モデル細胞株、ならびに、前立腺肥大症 (BPH)・未治療前立腺癌 (Primary PC)・CRPC各組織検体について、特異的オープンクロマチン領域 (OCRs) はエンハンサー領域により特徴付けされることが示唆された。OCRs近傍遺伝子発現変動の統合解析からは、CRPCが Primary PCと同様の クラスターに分類される群と、特異的なクラスターに分類される群の2群に大別され、各群を特徴づける転写因子候補を抽出し、機能解析を継続している。並行して、3次元クロマチン構造変化に着目したところ、CRPCではH3K36メチル化が増強するクロマチン領域において、H3K27メチル化が減弱し不活性化から活性化へとコンパートメントシフトを呈している領域も特徴的であることが判明した。CRPCではH3K36メチル化酵素であるNSD2の発現が上昇しており、この下流標的として上述の活性化領域から候補遺伝子群を抽出し機能解析を行なったところ、KIF18A遺伝子が重要な標的遺伝子であることを同定した。
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