本研究ではCRPCがカバジタキセル(CBZ)抵抗性をきたす機序を解明し、新規治療戦略を構築することを目指すこととした。まず、CBZ耐性株であるPC-3-TxR/CxR、ドセタキセル耐性株であるPC-3-TxR、通常のPC-3に対してRNA microarrayを行った。PC-3-TxRに対してPC-3-TxR/CxRで特に過剰発現しているRNAを調べたところLong non-coding RNAであるTP53TG1がPC-3-TxRと比較して11倍過剰発現していることがわかった。昨年度はPC-3-TxR/CxR においてTP53TG1をノックダウンして、CBZに対する感受性が回復するかどうかをproliferation assayにて確認したが、変化は認められなかった。今年度になり条件を微調整した結果、siTP53TG1投与でCBZ投与に対する感受性が回復した。しかし、結果が安定しないため別のRNAの解析を行ったが、ノックダウンによる感受性が回復は認められなかった。並行してSCIDマウスを使用したin vivo実験の準備を進めていたが、CBZ耐性化に関与する候補RNAの同定に至らなかったため、進捗に支障をきたす結果となった。また、コーヒー含有抗炎症作用物質カーウェオールとカフェストールがホルモン感受性前立腺癌細胞株だけでなく、CBZ耐性前立腺癌細胞株に対する増殖抑制、遊走抑制効果を持つことを明らかにした。さらにカーウェオールとカフェストールがCCR2を抑制することで遊走抑制効果を示すことを明らかにした。以前CCL2-CCR2シグナルがCBZ耐性化に関与している可能性を明らかにしており、カーウェオールとカフェストールの作用機序を解明することでCBZ抵抗性をきたす機序の解明につながる可能性が示唆された。今後さらに検討を進めていく予定である。
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