低活動膀胱は排尿筋収縮力/排尿筋収縮時間の減少により尿排泄の効率が低下する膀胱機能障害であり、下部尿路症状を有する多くの症例の病態に関与することが明らかとなっている。近年、低活動膀胱の原因として慢性の膀胱血流障害が注目されている。本研究では①ラット膀胱虚血モデル(腸骨動脈を擦過し動脈硬化を惹起する)を用いて低活動膀胱モデルを作製し、血流障害/動脈硬化の重症度と低活動膀胱発症の有無およびその重症度との相関について解析を行うとともに、②同動物モデルに対して、膀胱血流の改善効果が認められているPDE5阻害薬および低出力衝撃波を併用した治療を行うことで、膀胱の血流障害を改善させ、それが低活動膀胱の改善に至るかどうかを解析する、ことを目的として研究を行った。本研究の結果、PDE5阻害薬単独、低出力衝撃波単独、両者併用のいずれにおいてもコントロールに比べて膀胱血流を改善させる効果が示された。一方で、上記の治療による膀胱血流の改善が低活動膀胱を改善させることを証明するには至らなかった。また、低活動膀胱モデルの作製において、血流障害の程度と低活動膀胱の発症の有無もしくはその重症度は単純な相関を示さず、比較的大きな個体差を認めた。これは軽、中等度の血流障害を惹起させることで過活動膀胱モデルを作製した際には認められなかった所見である。血流障害による低活動膀胱発症およびその重症度はより複雑なメカニズムによって規定されている可能性が示唆された。本研究ではこのメカニズムを明らかにすることはできなかった。今後は血流障害が低活動膀胱を引き起こす機序を明らかとするとともに、より安定して低活動膀胱を発症する実験モデルを確立し、本治療法の効果を確かめる必要があると考えられた。
|