研究課題/領域番号 |
21K16744
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
杉野 輝明 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (70881746)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 褐色脂肪細胞 / 腎結石 / メタボリックシンドローム / uncoupling protein1 |
研究実績の概要 |
本研究では、[1]結石モデルマウスおける褐色脂肪組織の移植による結石抑制効果、[2]ノックアウトマウスを用いたUCP1の機能解析、[3]UCP1の制御による褐色脂肪細胞の活性化を介した尿路結石の予防法確立について検討を行う予定である。 [1]5週齢のC57/BL6Jマウスを用いて、①褐色脂肪細胞を除去する群、②除去した褐色脂肪細胞を移植する群、③Sham手術を行う群を用意した。手術後28日目より、これまでに私たちが作成した腎結石モデルマウスの手法を用いて、それぞれ腎結石を作成させた。褐色脂肪細胞を移植した群においては、Sham手術を行なった群と比較して有意に結石形成量が少なく(0.17倍)、腎における炎症性マーカーCcl2、Emr1、Tnf、Spp1の発現が低かった。 [2]褐色脂肪細胞に特異的なタンパク質であるUCP1が尿路結石の形成に与える影響を調べるために、UCP1ノックアウトマウス(B6.129-Ucp1tm1Kz/J)を用いた研究を行った。雄の野生型マウス(Ucp1+/+)、ヘテロ遺伝子マウス(Ucp1+/-)およびホモマウス(Ucp1-/-)をそれぞれ8匹ずつ用意した。8週齢まで飼育し、シュウ酸の前駆物質であるグリオキシル酸(GOX)80㎎/kgを7日間連続で腹腔内投与し、腎結石を形成させた。欠損型では、野生型と比較して結石形成量が有意に多く(3.28倍)、腎における炎症性サイトカインEmr1、Tnf、Spp1の発現が高かった。 [3]ヒト体内における褐色脂肪細胞が尿路結石の形成に与える影響を調べ、β3刺激薬が持つUCP1の活性化作用との関連を明らかにすることを目的とする。まずはpreliminaryの研究として、PET-CTを用いたヒト体内における褐色脂肪細胞の検出有無と尿路結石の関係を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
[3]におけるIRB申請に時間がかかっているため。
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今後の研究の推進方策 |
[3]は後ろ向きの研究であり、褐色脂肪細胞の活性を数値化することができず、検出有無の観点からのみ検討を行っている。しかし、褐色脂肪細胞の存在が、尿路結石の罹患リスクを下げる可能性があることが示された。この結果を元に、次のステッ プの前向き研究に進んでいくことができると考える。また、研究2の結果から、UCP1が欠損すると全身性の炎症が亢進し、結石形成が促進されると考えられた。この結果を踏まえ、褐色脂肪細胞のキータンパクであるUCP1 に着目しつつ、[3]を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請書に記載の【研究3】UCP1の制御による褐色脂肪細胞の活性化を介した尿路結石の予防法確立における前向き研究が完了しておらず、同研究の遂行および解析を行うために次年度に使用を検討している。
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