固形腫瘍に対する癌免疫療法はPD1やPDL1を中心にメカニズムが提唱されてきたが、その後の研究により癌が免疫システムから逃避する機序である癌免疫サイクルの重要性が注目されている。しかし、癌局所にリンパ球の浸潤があっても癌を攻撃できない癌があるなど(immune-cold)、局所微小環境における免疫療法のメカニズムは思ったほど簡単ではないこともわかってきた。T細胞が浸潤しても攻撃できない理由にはHLA抗原の喪失などのメカニズムが言われているが、それだけでは説明できない現象も見受けられる。そこで我々はPD1やPDL1の糖鎖修飾が重要な役割を果たしているのではないかと考えた。PDL1やPD1は糖タンパク質であり、これら分子の糖鎖修飾が機能に重要な役割を果たしている。実際に予備実験として市販のニボルマブ、ペンブロリズマブ、アベルマブの糖鎖修飾を比較すると、異なる糖鎖構造が同定され、同じような抗体薬品であっても違う薬効がある可能性が示唆される。これらの知見より、PDL1やPD1の糖鎖修飾に着目した研究は新たな知見をもたらす可能性がある。本研究では、PDL1/PD1の糖鎖修飾とその変異検出系を確立し、癌免疫サイクルにおけるPD1/PDL1の糖鎖分子の役割を検討し、これら分子を用いた治療効果予測バイオマーカーの開発を目指す。培養細胞系によるPDL1修飾糖鎖の解析:PDL1陽性膀胱癌細胞株(T24と5637細胞等)を用いて、培養液中の可溶性PDL1抽出を試みたが、キャピラリー電気泳動型糖鎖解析装置(GlyQ)の機器トラブルが発生し測定が困難となり検討できなかった。臨床検体での検討:PDL1の免疫染色は膀胱癌104例の染色が終わりPDL1陽性とMIB-1 indexの相関が予後と相関する可能性が見出された。
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