研究課題
本研究では、進行性腎細胞癌における診断時の病理標本と、免疫チェックポイント阻害薬の治療前後で継時採取した末梢血を用いて、免疫チェックポイント阻害薬不応性に関連する因子を探索した。当科で免疫チェックポイント阻害薬を行なった進行性腎細胞癌 51例を対象とし、stable deseaseの症例を除いて、奏効群(CR+PR)と非奏功群(PD)に分類した。病理標本からtissue microarray(TMA)を作成し、腫瘍浸潤免疫細胞の免疫染色を行った。また、治療前後の血漿についてLuminexを用いたmultiplex protein arrayを行い、両群で差のある因子を探索した。更に、血漿と同時に採取・保存された末梢血単核球(PBMC)を用いてflow cytometryによる免疫細胞の動態評価を行い、両群で差のある免疫細胞サブセットを探索した。結果として、TMA解析では非奏功群で腫瘍浸潤Foxp3+細胞の割合が有意に高かった。血漿タンパク解析では奏功群で免疫チェックポイント阻害薬治療2週後のeffector cytokineの有意な上昇を認めた。また、PBMC解析では非奏功群で同時点のTIM-3+CD8+細胞が有意に増加し、奏効群ではTIGIT+CD8+細胞が有意に減少していた。免疫チェックポイント治療前のTreg浸潤と治療2週後の疲弊CD8の割合は腎細胞癌の免疫チェックポイント治療非奏功を予測する可能性があり、血漿effector cytokineの上昇は奏功を予測する可能性があると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初予定した研究計画をほぼ完了し、腎癌における免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を予測しうる早期バイオマーカーを同定した。現在別コホートを用いてこれらのマーカーの検証を行うとともに、論文執筆中である。以上より、本研究は順調に進展したと言える。
本研究では凍結保存した臨床検体と既に収集された臨床的注釈を用いて後ろ向きに検討を行いバイオマーカーを同定した。今後、同定したバイオマーカーを用いた前向きな検討で早期に免疫チェックポイント阻害薬の治療効果が予測できるかどうか評価し、本研究で得られた結果の妥当性を検証することが期待される。
研究が順調に経過した結果、論文発表前に別コホートを用いた追加の検証を行う必要性が生じたため。
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Urologic Clinics of North America
巻: 50 ページ: 335~349
10.1016/j.ucl.2023.01.012