膀胱癌診療において必須である膀胱内視鏡検査の診断精度にばらつきを軽減させることを目指し、同一症例の膀胱内視鏡検査の動画を、経験の異なる医師らに観察させ、その際の視線計測(アイトラッキング)を行うことによる評価を行った。前年度に引き続き、データ収集を行い、被験者として医学生9名分のデータを追加取得して解析を行った。同様に専門医が画面の広い範囲を網羅的に観察しることが確認された。 また、膀胱内視鏡検査の動画を序盤、中盤、終盤と経過時間で分けて解析したところ、専門医を1.00としたとき医学生0.66、初期研修医0.77、後期研修医0.78であった。専門医以外はほとんど視線の動く範囲は一定だったのに対して、専門医は動画の中盤および終盤に比べ、序盤は広い範囲で観察していた。これにより、膀胱内視鏡検査において、経験のある専門医は、リアルタイムに画面の広い範囲を効率よく観察していることが確認された。 膀胱内視鏡検査支援する人工知能技術としては、リアルタイムに病変を検出させるための技術の開発をおこなった。深層学習を用いて腫瘍病変の画像の識別を行い、病変候補分布図(Probability Map)を作成し、アノテーションデータと比較することで診断精度を5分割交差検定により評価した。Probability Mapを二値化した領域について、50%以上が実際の病変領域と重なった場合を正解とした場合の結果は、学習データにおけるF値が最大となる閾値においてテストデータでは白色光、Narrow Band Imaging(NBI)それぞれ平均感度93.6%、84.4%、平均特異度89.7%、81.2%を達成した。AI技術と観察者の視線の可視化により、技量の評価だけでなく、技量向上にむけた教育的な活用が期待される。
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