尿路上皮癌の多段階進展においてDDX31が重要な分子であることがわかっている。本研究ではDDX31の生理的な機能を理解するためにDDX31のノックアウトマウスをCRISPR-Cas9システムで作成した。Ddx31遺伝子の機能喪失のために、exon4を欠損させたゲノム編集マウスを作成した。受精卵にエレクトロポレーションにより、Cas9タンパク質、Ddx31 crRNA1、Ddx31 crRNA2、tracrRNAを導入した。欠失が確認されたマウスを交配させ、次世代にてヘテロマウスを獲得した。Ddx31 ノックアウトマウスはヘテロで系統維持することが可能であり、野生型とノックアウトマウスを比較したところ雄、雌とも12週間の時点で体重変化はなく、各臓器の変化はマクロ・ミクロ共に認めなかった。48週間生存することが確認できた。次にTrp53 R172H変異マウスを作製した。ゲノム編集技術を活用して、Trp53遺伝子の172番目のアルギニン残基をヒスチジン残基へと変異させたマウスを作成した。受精卵にエレクトロポレーションにより、Cas9タンパク質、Trp53 crRNA1、tracrRNA、Trp53 R172HオリゴDNAを導入した。172番目のアルギニン残基をコードする配列(cgc)がヒスチジン残基(cac)をコードする配列へ欠失されているかを解析した。マウス尿路上皮にのみDdX31が発現するDdx31ノックインマウスについてはBK5をプロモータとして、Ddx31を導入した。mScarletをC末端につけており、尿路上皮と皮膚に発現することを蛍光顕微鏡で確認した。Ddx31 ノックアウトマウスとTrp53 R172H変異マウスの交配を行い、両遺伝子改変を組み合わせたマウスを作製中である
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