再発・病期進展の可能性が高い筋層非浸潤性膀胱癌に対する低侵襲かつ高精度のバイオマーカーの発見、新たな膀胱内注入療法の確立を目的として、miR-146a-5pに関連する研究を行った。 本年度は、まずmiR-146a-5pが腫瘍の血管新生に与える影響を詳細に解析するために、膀胱癌同所移植モデルマウスを用いて検討を行った。miR-146aを過剰発現させた膀胱癌細胞株を尿道カテーテルにて膀胱内に注入し、膀胱腫瘍モデルを作製した。3週間後、IVISイメージングにより腫瘍サイズを測定したところ、miR-146aの過剰発現あり/なし群での比較において、過剰発現あり群は有意に腫瘍が大きい傾向が見られた(p<0.01)。摘出腫瘍について血管内皮マーカーであるCD31の局在を免疫染色にて検討したところ、血管領域を示すCD31陽性領域は、過剰発現ありの腫瘍でより広範であった。また、ほとんどの血管は、腫瘍を包んでいる腫瘍底辺部・膀胱の内側に見られた。血管領域と密度が細胞への酸素供給に関連あると予測し、さらに低酸素マーカーであるHIF1αの発現を検討した。その結果、CD31陽性領域の少ない腫瘍部位は、HIF1α発現が高いことが判明した。 次に、昨年miR-146a-5pの標的遺伝子として同定したTET2が膀胱癌の全生存率に及ぼす影響を調べるために、膀胱癌患者(n=404)をTET2およびc-Mycの発現量の違いで分類して生存分析を行った。TET2発現レベルの低値、c-Myc発現レベルの高値は、単独で膀胱癌の予後不良に関連していた。また、TET2低発現かつc-Myc高発現の群では全生存率はさらに低下(p<0.0001)することから、miR-146a-5pによるTET2の抑制が膀胱癌の予後に重大な影響を与えることが示唆された。
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