研究課題
正常妊娠初期脱落膜CD4+T細胞4例、正常妊娠後期脱落膜CD4+T細胞3例、妊娠高血圧腎症(PE)脱落膜CD4+T細胞3例、 正常妊娠後期末梢血CD4+T細胞1例(正常妊娠後期脱落膜1例と同じ対象由来)をscRNAseqに供した。このうち、正常妊娠初期脱落膜2例、正常妊娠後期脱落膜1例、正常妊娠後期末梢血1例、妊娠高血圧腎症脱落膜1例は同時にscTCRseqも行った。子宮内膜CD4陽性T細胞は、1)ナイーブ型、2)濾胞性T細胞、3)メモリー型、5)Th1/Th2中間型(7-Th1/Th2 int)、6)Th1型(、7)パーフォリン(PRF)+活性化型、8)FOXP3-Treg、9)Th17、10)FOXP3+Tregからなるヘテロな集団であった。クローナルに増加したT細胞は主としてTh1/Th2 int、Th1、PRF+活性化、FOXP3+Tregクラスターに存在しており、これらのクラスターは抗原刺激を受け活性化・分化したと考えられた。クラスター毎の発現変動遺伝子解析では、妊娠後期では初期に比べメモリーとTh1/Th2 intでT細胞活性化関連遺伝子の発現が低下していた。一方、PEでは妊娠後期に比べ、メモリーとTh1/Th2 intでT細胞活性化関連遺伝子の発現が上昇していた。さらに、PEでは、FOXP3+TregにおいてPDCD1をはじめとした疲弊関連遺伝子の発現が増加していた。Treg疲弊・機能不全に関与することが示されている遺伝子セットの発現スコア(module score)をFOXP3+Tregにおいて比較すると、PEが正常妊娠後期より有意に高値であった (p = 0.026)。以上より、PEではメモリー・Th1/Th2 inの活性が上昇し、FOXP3+Tregが疲弊することが病態形成に関与していることが示唆された。
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