研究課題
令和4年度は令和3年度に引き続いて複数の不死化細胞の樹立を試みた。まず、正常卵巣上皮細胞、BRCA-1 mutation/BRCA-2 mutationのある患者から採取した卵巣上皮細胞、卵巣内膜症性嚢胞細胞、卵巣粘液性腺腫細胞および子宮内膜細胞を手術時の患者検体から採取し、不死化遺伝子(Bmi-1、h-TERT、SV40T)を搭載したセンダイウイルスベクター(SeVベクター)を感染させた。初代培養を継代し、非感染細胞との増殖速度を確認した。各細胞株を長期継代(25継代)およびシングルセル化を行うためのcloningを実施した。SeV感染を確認した後に長期継代が実施可能であることを確認し、各細胞株の染色体解析(QH染色およびmFISH)を実施した。また、作成した不死化細胞株から培養上清由来のエクソソームを超遠心法により抽出し、nanosightによる粒子径の計測、ウエスタンブロットによるタンパクの確認を行い、十分量のエクソソームが抽出できることを確認した。また、各細胞の染色体解析(G-bandやmFISH)を実施し、異数性や構造異型の有無を確認した。さらに、各不死化細胞株からtotal RNAを抽出し、次世代シークエンス解析(transcriptome 解析)を行ったところ、複数の特定の遺伝子発現が有意であることがわかった。さらにRT-PCRでこの遺伝子の発現を確認した。各細胞が上皮細胞であることを確認するために、免疫細胞化学染色で細胞の種類を確認した。今回、センダイウイルスを用いて通常増殖しにくい卵巣上皮細胞を不死化することに挑戦し、長期継代が可能となった。また、細胞の性状解析に加えて、網羅的に遺伝子発現解析を行い、発癌に関与する可能性がある遺伝子の候補を発見した。今後は各細胞についてさらに解析を進めていくが、研究開始当初の目標であった卵巣不死化細胞の樹立はすでに成功し、現在論文作成中である。
2: おおむね順調に進展している
予定した計画通りの研究の進捗である。
各細胞株より得られたデータをもとにCRISPR-Cas9により、BRCA1.BRCA2不死化細胞株におけるBRCA1.BRCA2変異を修復させ、正常な細胞株にゲノム編集し、染色体の異常や変化を確認する。さらに、子宮内膜細胞の不死化細胞樹立も試行予定である。
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