研究課題/領域番号 |
21K16774
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
古株 哲也 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80848490)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ERR / ER / 子宮体癌 / 化学療法抵抗性 / miRNA |
研究実績の概要 |
まずER陰性子宮体癌細胞株のHEC-1AとER陽性子宮体癌細胞株のIshikawaを用い、予備実験のごとくCDDPおよびPTX耐性細胞株(以下、抵抗性株)を作成した。それぞれの抵抗性細胞株ではERRαの発現が増加していることをreal time PCRで確認した。ERRαが薬剤抵抗性に関与するATP-binding cassette (ABC)トランスポーターの一つであるABCB1を、miR-9を介して制御することが他癌腫で報告されており同部位の検討をしたところ、抵抗性株ではmiR-9の発現が低下していた。またmiR-9はERRαを強発現した非抵抗性株で発現低下し、ノックダウンした治療抵抗性株では発現増強していた。さらに、ERRαのinverse agonistであるXCT790によっても抵抗性株でmiR-9の発現が低下し、ERRαの下流にmiR-9が存在することが示唆された。またABCB1のmRNAは非抵抗性株でERRαを強発現することで増加し、XCT790によって抵抗性株で低下した。XCT790によって抵抗性株の薬剤感受性が改善した。 ERRαと薬剤感受性およびERαとERRαのcrosstalkを評価する目的で、当院で根治術後に補助化学療法を施行した中・高リスク子宮体癌症例の検体を用いて治療効果、再発への影響を検証した。補助化学療法別でみたdoxorubicin/cisplatin(AP)群とpaclitaxel/carboplatin(TC)群でERRαの発現に差はなかった。無病生存期間ではERRαのH-scoreが151以上の症例でAP群に比してTC群が予後不良であり、これまでの基礎実験の結果を含めERRα高発現症例ではpaclitaxelへの感受性を低下させている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
治療抵抗性株は取り扱いが難しく、抵抗性を維持が想定以上に困難であり、非抵抗性株に比して実験毎のばらつきが目立ち、再現性のある結果を得るのに時間を要した。加えてCOVID感染症拡大に伴い、研究関連物品の納入遅延をはじめ、人員の制限などが生じ、予定していた実験が一部実施できていない。
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今後の研究の推進方策 |
In vitroではABCC1やABCG2などのABCトランスポーターとERRαの影響をさらに検討していく。具体的にはのまたPCRによる発現評価のみならず、western blottingを用いたタンパクレベルでの評価も追加して行っていく。抵抗性株は抵抗性を獲得した薬剤以外の機序を持つ他の薬剤に対しても一定の抵抗性を示す傾向にある。そのため実臨床で用いられる複数の薬剤に対し、各抵抗性株がどのような効果を示すかを検証することで、抵抗性獲得後の治療選択への糸口を見出す。抵抗性獲得制御機構の基盤は解明しつつあるため、最終的にはABCトランスポーターとERRαを抑制した実験系が薬剤抵抗性株において薬剤感受性再獲得をWST-8を用いて証明する。また同様の実験系を用いてin vivoで腫瘍抑制効果があることを検証する。これまでの実験からERα発現の有無で抵抗性株のABCトランスポーターやERRαの発現レベルに差があることが示唆されており、エストロゲン存在の有無がもたらす抵抗性制御機構への影響を検証する。 臨床検体を用いた予後解析に関してはさらなるデータ解析を進めていく。ERRα、ERαの発現が薬剤感受性と関連を示唆できればバイオマーカーとして個別化治療へつながることが期待できる。またERRαとERαとのcrosstalkへの影響を掘り下げるため、腫瘍組織そのもののエストロゲン合成能を抗アロマターゼ抗体を用い評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID感染症蔓延により予定していた学会出席のための交通費が不要となったこと、研究室既存の試薬等を用いて賄った実験があったことから次年度使用額に余剰金が生じた。 当該助成金は次年度研究費および学会参加の交通費として使用予定である。
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