これまで子宮体癌細胞株のHEC-1A(ER陰性)とIshikawa(ER陽性)を用いてCDDPおよびPTX耐性細胞株(以下、抵抗性株) を作成し、非抵抗性株との比較からERRαと薬剤排泄トランスポーターのABCB1およびその制御因子であるmiR-9の関連を明らかにしてきた。また子宮体癌の臨床検体を用いた検討ではERα発現が高い腫瘍は予後が良好で、ERα高発現腫瘍に限るとこれまで予後因子と報告されてきたERRαの発現強度は予後に影響しなかった。ERα高発現腫瘍ではcross-talkによりERRαの影響が限定的であることが示唆されるものである。さらにこれまで明らかとなっているERRαの分子学的動態と挙動(エネルギー代謝に関与、低栄養環境で発現増加、腫瘍増殖を制御、ROSを制御など)と本研究でこれまで得た知見から、更なる抵抗性獲得の機序を解明するため、がん微小環境、特に低栄養環境に着目し、評価を行った。低栄養環境下が惹起するTCA回路系、解糖系、アミノ酸代謝系への影響を評価したところ、糖取り込みに関連するGLUT、シスチン取り込みに関与するxCT、乳酸取り込みに関与するMCT、腫瘍増殖に関与するVEGF、HIF-1α、ERRαが発現増加した。さらに低栄養環境下では化学療法抵抗性を示すことを確認した。ERRαを抑制し検討したところ、MCT発現は低下したが、その他代謝関連因子に大きな変化はなかった。次に低栄養環境で発現増加し、ROSを制御するxCT焦点をあて検討した。xCTは低栄養環境だけでなく、治療抵抗性株でも発現増加しており、発現増加する低栄養環境下ではROSが低下していることを確認した。そしてxCT阻害はROS増加だけでなく化学療法感受性を改善させた。本研究結果は子宮体癌における治療抵抗性機序を解明し、新規治療標的を想起させうるものである。
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