研究課題/領域番号 |
21K16775
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
片岡 恒 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90849027)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヘプシジン / 鉄 / 子宮内膜症 / LPS |
研究実績の概要 |
本研究は鉄恒常性の重要な因子であるhepcidinによる鉄代謝やその調節因子の同定、調節経路を明らかにすることで、子宮内膜症の病態進展の制御だけでなく、発症予防にも寄与する新たな治療・予防戦略の分子基盤を確立させることである。 我々は、子宮内膜症を有さない患者の子宮内膜間質細胞(NESCs)と子宮内膜症を有する患者の子宮内膜間質細胞(EESCs)を用いて、過剰鉄によるアロマターゼプロモーター発現について検討した。高濃度の2価鉄を負荷したところNESCsではアロマターゼプロモーター発現に変化は認めなかったが、EESCsではアロマターゼプロモーターのPI.3とPIIの発現が促進されることが明らかとなった。これは既に子宮内膜症を有する患者における正所性の子宮内膜間質細胞は局所の環境変化によってその性質が大きく変化している可能性が考えられた。 これまでに我々は、子宮内膜症の患者の月経血中には非子宮内膜症の女性に比してhepcidinの発現量が多いことを見出していたが、その発現調節因子については不明であった。子宮内膜症の発症と細菌性エンドトキシンであるLPSの関連が示唆されていることから、NESCsにLPSを添加し、hepcidinの発現変化をreal-time RT-PCRを用いて検討した。すると、LPSを負荷することによりNESCsにおけるhepcidinの発現が増加した。また、鉄濃度によるhepcidinの発現量の変化について、月経血中を用いたELISAにより検討したが、月経血中の鉄濃度とhepcidin濃度には関係性は見い出せなかった。これらより、hepcidinの発現調節には膣内細菌叢の変化によるLPSの増加と、NESCsへの直接作用により調節されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験の再開とともに、マウスモデルを用いて制御因子の作動薬を用いた検討を行う予定であったが、コロナ禍で動物実験の再開が遅れ、着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
Hepcidinの発現制御因子については、炎症性メディエーターだけでなくエピジェネティックな側面からも検討する予定である。また、子宮内膜症の病態形成における中心的な役割を果たすを考えるPGC-1aとの関連性とより深く明らかにするため、PGC-1aのプロモーター活性の評価を行う。Hepcidin発現調節因子としてLPSが同定されたが、TLR4受容体の阻害、またAkt/STAT3シグナル伝達経路との関連についても研究を進めていく予定である。 In vivoではin vivoの結果を踏まえ、各種作動薬の投与による発現変化、治療・予防効果、耐用性について検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験への着手の遅れにより、マウス購入や飼料代、各種薬剤購入に充てなかったためと考える。2022年度以降にマウスモデルを用いた検討を早急に開始する。
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