研究課題/領域番号 |
21K16780
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
松尾 陽子 久留米大学, 医学部, 助教 (90368910)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 血友病保因者の実態調査 |
研究実績の概要 |
「血友病保因者の実態調査」では、集積したデータの解析を行なった。その中で着目すべきであった結果は、 ①血友病保因者の中で特に、血友病Aでは、凝固因子活性値の個人差が大きく、37%では血友病患者並みに活性値が低いことがわかった。②出生した血友病新生児の中で、頭部の出血を認めたのは血友病罹患男児のみであった。また、分娩方法は、全例、経膣分娩であった。頭蓋内出血も5例認めており、非血友病新生児の頭蓋内出血の割合と比較してもかなり高い。 ③全分娩例のうち、約7割の症例で、事前に産科医に保因者であることを告げないまま分娩に臨んでいた。④全分娩例のうち、約1割の症例で、分娩時に妊婦自身も出血多量であった。 これらの結果より、保因者へは、妊娠・出産の適齢期になる前に、適切な保因者告知を行う必要性があること。分娩は、出生する新生児だけではなく、妊婦自身も出血傾向がある場合があることを認識し、産科医・血友病専門医・新生児科医が連携することが重要であることがわかった。さらに、この実態調査をもとに「Hemophilia carrer note」を作成した。この冊子は、保因者自身が母子手帳のように管理していくものである。保因者の背景、健康状態、出血症状、分娩履歴などをその都度書き込むことで、医療者との円滑な連携を測っていくツールの一つとし、保因者支援体制の構築を目指す。 また、「血友病保因者の実態調査」の中間発表を、第74回日本産婦人科学会学術講演会にて行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「血友病保因者の実態調査」はコロナ禍で思ように進まない部分はあったが、解析に必要な症例の集積はできており、その結果をもとに支援体制の構築への準備、患者や家族への啓発活動を開始できている。
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今後の研究の推進方策 |
「hemophilia carrer note」を血友病患者会全国組織の定例講演会にて配布し、血友病患者、家族、および保因者への啓発活動を行う。また、論文としてまとめ、産婦人科学会などの学会発表や、診療連携会議などを開催し、他科・他施設との血友病保因者支援体制の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
血友病保因者支援のための健康管理ノート「Hemophilia carrier note」はデータ作成まで行えたが、印刷業者の選定中であり、今年度は印刷まで至らなかった。次年度に印刷し配布を行う。
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