「血友病保因者の実態調査」を行なった。【成績】2022年9月時点で77名の回答を得て、日本産婦人科学会において報告した。回答者のうち67名の女性に出産経験(のべ148名出生)があった。74症例 (50.7%)では産科医は妊婦が保因者かどうか知らされないままの分娩であった。出生した血友病男児(81名)のうち 11症例(7.5%)に頭部出血(頭蓋内出血6例、頭血腫5例)を認め、全て経膣分娩であった。また、分娩時に妊婦自身も出 血が多かったと回答した症例は16症例(11%)、この内、4症例(2.7%)に輸血が施行されていた。回答を得た血友病保因者の約4割の凝固因子活性値が40%未満であり、血友病の診断基準を満たしていた。さらにアンケート調査では自身の健康状態に不安があり出血症状を認めた際にどの医療機関を受診したら良いかわからないという意見もあった。【結論】血友病保因者妊婦の分娩においては、出生児の出血リスクと共に妊婦自身の出血リスクにも注意が必要 であり、周産期管理にあたっては産科医・血友病専門医・新生児科医が連携して行うべきである。保因者の中には自身が保因者だと知らないまま出産に臨む女性も少なからず存在し、問診時の丁寧な家族歴の聞き取りも重要である。 これら調査結果より、血友病保因者も出血傾向があり止血管理が必要な場合もある事がわかった。他科・他施設と連携し、血友病保因者を包括的に支援するために「血友病保因者手帳」を作成。患者会や外来診療を通じて配布した。
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