研究課題/領域番号 |
21K16782
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大池 輝 東北大学, 医学系研究科, 助教 (90884552)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 胎盤栄養膜幹(TS)細胞 / 低出生体重児 / ゲノムインプリンティング / 胎盤オルガノイド |
研究実績の概要 |
ヒト低出生体重児(SGA)の病因として、胎盤の増殖と分化の障害が指摘されている。本研究では、SGAの胎盤細胞のエピジェネティックな分子機構を解析すること、ならびにSGAの三次元疾患(SGA)胎盤オルガノイドモデルを用いて、その病態を再現することを目的としている。まず、初年度は、SGA胎盤の絨毛細胞に特異的なエピゲノム変異について検討を行った。典型的な3例のSGA胎盤より未分化な細胞性栄養膜(CT)細胞を、FACS法及び磁気細胞分離法を用いて、95%以上に高純度な細胞を収集。次に、網羅的な遺伝子発現解析とゲノムインプリント(GI)遺伝子領域のDNAメチル化の解析を行った。さらに、既にデータを取得している正常な胎盤の構成細胞と遺伝子発現及びDNAメチル化プロファイルを比較し、インプリント遺伝子の異常も含め、疾患特異的な遺伝子変異を複数同定した。その結果、胎盤発生に関わる複数の遺伝子(転写因子を含む)に違いがあることが明らかとなった。さらに、全ゲノム網羅的なDNAメチル化を、BS-seq法によって解析した。本年度は、正常胎盤の構成細胞とSGA胎盤由来の構成細胞の網羅的な遺伝子発現とDNAメチル化データを比較することで、エピゲノム状態の変化により影響を受けているGI遺伝子に注目しつつ、影響を受けている遺伝子を同定した。現在、発現量の変化の著しい遺伝子に対してGO解析およびパスウェイ解析を適用することで、疾患特異的な変動を示す分子機構を明らかにしている。今後、SGA由来疾患モデルTS(疾患TS)細胞の樹立と疾患T S細胞の細胞特性を解析する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、SGA胎盤構成細胞の精製と網羅的な遺伝子発現解析及びエピゲノム解析を実施した。具体的には、まず、東北大学及び関連医療機関の倫理委員会への申請し、研究の承認を得た。次に、SGA胎盤(3例)を収集した。さらに、胎盤組織を消化酵素で単一細胞にし、FACS及び磁気細胞分離法を用いて、未分化な細胞性栄養膜細胞(CT)細胞だけを高純度(>95%)に分離・精製した。精製した細胞よりpoly(A) RNAを用いて、RNA-seq解析を実施した。また、次世代シーケンサーを用い、DNAメチル化(WGBS法)の網羅的解析を行った。正常胎盤由来の細胞とS G A胎盤由来の細胞で発現量の異なる遺伝子を抽出し、GO解析を行ったところ胎盤発生に関与する遺伝子群やインスリン応答に関与する遺伝子群がエンリッチしていた。現在、DNAメチル化の変異と合わせ、疾患特異性を明らかにしている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、SGA由来疾患モデルTS(疾患TS)細胞の樹立と細胞特性の解析を行う。典型的なSGA胎盤の未分化なCT細胞より、疾患TS細胞株を樹立する(3-5株)。樹立した疾患T S細胞の網羅的な遺伝子発現と疾患特異的なエピゲノム変異を調べることで、疾患細胞の特性が、どの程度維持されているのか確認する。さらに、疾患TS細胞の細胞特性について検討する。細胞特性は、細胞増殖能、細胞分化能、DNA合成能(BrdUの取り込み)、アポトーシス能について正常TS細胞と比較することを計画している。
|