研究課題/領域番号 |
21K16782
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大池 輝 東北大学, 医学系研究科, 助教 (90884552)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヒト栄養膜幹細胞 / 低出生体重児 (SGA) / 胎盤オルガノイド / ヒト胚着床 |
研究実績の概要 |
ヒト低出生体重児(SGA)の病因として、胎盤の増殖と分化の障害が指摘されている。本研究では、SGAの胎盤細胞のエピジェネティックな分子機構を解析すること、ならびにSGAの3次元疾患由来胎盤オルガノイドモデルを用いて、その病態を再現することを目的としている。本年度(2年目)は、疾患TS細胞の樹立について検討した。満期胎盤のCT細胞から樹立した栄養膜細胞株は、増殖能が乏しく、初期胎盤由来のTS細胞と明らかに形態が異なっていた。また、老化マーカーであるSA β-Galの活性を調べたところ、この満期胎盤から樹立した栄養膜細胞株では強い活性が認められ、細胞老化を起こしていることが判明した。そこで、リプログラミングの手法を用いることで満期の胎盤からTS細胞を樹立するできるのではないかと考えた。満期胎盤の栄養膜細胞と初期胎盤由来のTS細胞の間で、遺伝子発現量の違いがないか検討し、3種類の転写因子の発現が著しく低いことを確認した。そこで、細胞老化抑制に作用するp53ドミナントネガティブ変異体(p53DN)と同時に3種類の転写因子をそれぞれ満期の栄養膜細胞に遺伝子導入した。その結果、特定の転写因子を加えた場合、TS様の形態を示す自己複製能力の高い細胞株が得られることが明らかとなった。また、この満期由来TS細胞の細胞分化能について解析したところ、ST細胞、EVT細胞へ正常に分化することが明らかとなった。 この手法を用いて、SGAの胎盤よりCT細胞を精製し、疾患由来TS細胞を作製することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画では、疾患由来TS細胞のゲノム及びエピゲノム解析は今後進める。また、細胞特性についても十分な評価は行われていない。3次元培養についても、現在検討している。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、典型的なSGAの病態を示した胎盤(5例以上)から、本年度確立したリプログラミングの手法によって疾患得意的なTS細胞を樹立する。さらに、樹立したTS細胞を用いて増殖能や分化能などの細胞特性について検討する。次に、疾患特異的TS細胞の網羅的な遺伝子発現解析やゲノムワイドなメチル化状態の解析を行う。これらのデータを初年度に取得した生体のSGA胎盤細胞のデータと比較することで、疾患細胞の特異性がどの程度維持されているのかについて検討する。さらに最終年度は、生体で起こるSGAの病態を高度に再現するモデルを開発することを目的として、疾患由来TS細胞の三次元培養技術の確立を目指す。具体的には、マトリゲル包埋法などの手法を用いて、ヒトTS(疾患TS)細胞を培養することで、胎盤発生の一部を試験管内で再現するモデルを開発する。最終的には正常胎盤由来のTS細胞と疾患胎盤由来のTS細胞から三次元モデルを構築し、これらを比較することで、疾患胎盤で起こる異常を時空間的に捉えたい。また、胎盤はその発生過程において常に母体側の子宮組織と相互作用する。そこで、母体組織との相互作用における異常を捉えるために、上記の三次元胎盤モデルと子宮内膜細胞や血管内皮細胞を用いて三次元共培養を行い、ヒト着床モデルを試験管内で構築する計画である。得られた三次元構造が胎盤絨毛を模倣しているかどうかについて、免疫組織学的手法を用いて解析し、最適な培養条件を決定する。また、疾患ヒトTS細胞から分化させた絨毛外栄養膜(EVT)細胞の毛細血管網への浸潤と置換能、合胞体栄養膜(ST)細胞の栄養・ガス交換能やホルモン産生能を評価し、疾患胎盤機能を正常モデルと比較することを計画している。
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