研究実績の概要 |
申請者らは早産の予防・治療を目的とした研究として、抗炎症性物質や抗プロテアーゼ作用物質に着目して一連の研究を進めている。 ヒト子宮頸管無力症の発症予測におけるPGRN、SLPIの重要性および治療的可能性を検証するために以下の検討を行っている。1)頸管粘液中のPGRN、SLPI濃度と 頸管無力症発症との関連の検討 頸管無力症症例の検体採集と情報収集を行った。妊娠37週以降に誘発分娩を目的として入院した妊婦(初産婦:n=36、経産婦:n=13)を対象として、Bishop scoreという子宮の熟化を数値化する指標を内診評価し、綿棒を用い子宮頸部より頸管粘液を採取し子宮頸管粘液中のPGRN濃度とSLPI濃度をELISA法にて測定し、Bishop scoreとの関係について初産婦と経産婦に分けて解析した。初産婦を対象とした解析において、子宮頸管粘液中のPGRN濃度とBishop scoreに強い負の相関( r=-0.70 , p<0.01)が見られ、これはPGRN濃度の低下と頸管熟化の関連を示唆する。これらの分娩時の頸管熟化との関連について論文を作成中である。2)プロゲステロンの膣内投与がPGRN,SLPIの発現に及ぼす影響の検討。現在プロゲステロン製剤の膣内投与が可能となるよう調整を行なっている。3)TNF受容体を標的とした抗炎症性蛋白PGRNの治療的可能性を検討する。頸管熟化早産マウスモデルに対するPGRN誘導体の投与による早産抑制効果の検証に関しては、マウスモデルの使用にまだ至っていない。今後マウスモデルを用いた実験を予定する。
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