研究課題/領域番号 |
21K16790
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 幸司 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00900151)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 卵巣がん / オルガノイド / モデルマウス / 遺伝子改変 / CRISPR/Cas9 |
研究実績の概要 |
最も予後不良な婦人科がんである卵巣がんの基礎研究において、従来用いられてきたマウスモデルはヒト卵巣がんの病態の再現性に乏しく、また近年開発の進む遺伝子改変マウスモデルも作製に莫大な時間と費用がかかるため、実用化には至っていない。 このような問題を克服し、卵巣がん研究に広く活用できるモデルの樹立を目指して、本研究では正常免疫マウス卵管より作製したオルガノイドに発がん刺激を加えin vitroでマウス卵巣がんを発生させ、正常免疫マウスに同所移植する「オルガイド由来卵巣がんマウスモデル」の樹立を目的としている。本研究では、ヒト卵巣がんで高率に認める遺伝子変異をマウス卵管オルガノイドに導入することで、ヒト卵巣がんの病態を模倣する遺伝子改変マウスの利点を残しつつ、より安価でスピーディ、かつ高効率に樹立できるモデルの開発を目指している。 現在、正常免疫マウス由来の卵管オルガノイド作成についてはプロトコールが確立されつつある。共同研究者である米国Moffitt Cancer CenterのDr. Florian Karrethと発がん刺激を加えるためのプラスミドの作成を進めており、プラスミドが完成次第、順次卵管オルガノイドに導入し、発がん刺激を加え、卵巣がんオルガノイドの作成を目指している。また、遺伝子導入したオルガノイドに卵巣がんの性質が認められるかを確認したのち、正常免疫マウスの卵巣内に同所移植し、オルガノイド由来卵巣がんマウスモデルの作成へと繋げる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究においては、マウス卵管オルガノイドにヒト卵巣がんで高頻度に認める遺伝子変異を導入し、マウス卵巣がんオルガノイドを樹立することを目的としている。当初計画では共同研究者であるMoffitt Cancer CenterのDr. Florian Karrethとともに6-8週齢のメスの正常免疫マウスを安楽死させ、卵管上皮細胞を単離し、Matrigel内で培養し卵管オルガノイドを樹立し、レンチウィルスを用いて標的遺伝子のノックアウト(CRISPR/Cas9を用いたがん抑制遺伝子Trp53、Brca1、Pten、Lkb1のノックアウト)、強制発現(がん遺伝子Mycの強制発現)を行う予定としていたが、国内外のCovid-19パンデミックにも影響を受け、実験の進捗はやや遅れている。正常免疫マウスからの卵管オルガノイド作成技術は確立されつつあり、各プラスミドの準備が整い次第、オルガノイドに遺伝子導入を行い、卵巣癌としての性質を有するかを確認したうえで、正常免疫マウスの卵巣に同所移植し、オルガノイド由来卵巣癌マウスモデルの作成を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
今後当研究を推進していくにあたっては共同研究者である米国Moffitt Cancer CenterのDr. Florian Karrethとより緊密に連携し、卵巣がんオルガノイド作成に必要なプラスミドの早期のラインアップ完成を目指す。COVID-19ワクチン接種がカナダや日本を含めて世界中で広がってきており、今後の研究環境は今より好転していき、研究が促進されるものと考える。我々の大学においてもプラスミドの作成を試みてゆき、早期に卵管オルガノイドに遺伝子導入を行い、卵巣癌オルガノイド作製を目指していく予定である。
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