最も予後不良な婦人科がんである卵巣がんの基礎研究において、従来用いられてきたマウスモデルはヒト卵巣がんの病態の再現性に乏しく、また近年開発の進む遺伝子改変マウスモデルも作製に莫大な時間と費用がかかるため、実用化には至っていない。 このような問題を克服し、卵巣がん研究に広く活用できるモデルの樹立を目指して、本研究では正常免疫マウス卵管より作製したオルガノイドに発がん刺激を加えin vitroでマウス卵巣がんを発生させ、正常免疫マウスに同所移植する「オルガイド由来卵巣がんマウスモデル」の樹立を目的としている。本研究では、ヒト卵巣がんで高率に認める遺伝子変異をマウス卵管オルガノイドに導入することで、ヒト卵巣がんの病態を模倣する遺伝子改変マウスの利点を残しつつ、より安価でスピーディ、かつ高効率に樹立できるモデルの開発を目指している。 現在、正常免疫マウス由来の卵管オルガノイド作成についてはプロトコールを確立し、安定して3‐4回の継代が可能となった。オルガノイドへ発癌導入するためのプラスミドは共同研究者である米国Moffitt Cancer CenterのDr. Florian Karrethと始めに作成するモデル(Brca1、TP53、Ptenのノックアウト+firefly luciferase)について作成した。今後発育良好な卵管オルガノイドに順次発癌性変異を導入し、卵巣がんオルガノイドの作成を目指している。また、オルガノイドの安定的な発育を確認したのち、遺伝子導入したオルガノイドに卵巣がんの性質が認められるかを確認する予定である。
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