研究実績の概要 |
<研究目的>多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は無排卵性不妊の女性の80%を占めるが、その排卵障害の病態は十分には解明されておらず、特異的な治療法はない。老化細胞がsenescent-associated secretory phenotype (SASP)因子を介して慢性炎症や線維化を引き起こすことにより、細胞老化が様々な病態に関与していることは知られているが、卵巣における関与はほとんど報告されていない。本研究では、①PCOS卵巣における細胞老化とSASP因子、②顆粒膜細胞における高アンドロゲンによる細胞老化誘導、③細胞老化作用薬のPCOSへの有効性を明らかにすることを目的とする。 <実験方法>本研究では、ヒト顆粒膜細胞をヒト卵胞液より分離培養し、ヒト卵巣標本は婦人科手術で摘出した卵巣を用いて行う。PCOSモデルマウスは、幼若Balb/Cマウスにデヒドロエピアンドロステロン(6mg/体重100g)を毎日皮下注射して作成する。培養hGCの細胞老化は、senescence-associated beta-galactosidase (SA-βgal)活性、細胞周期の変化をフローサイトメトリー、細胞増殖能をMTTアッセイ、遺伝子発現(p16 INK4, p21, p53, retinoblastoma(Rb))をqPCR、蛋白発現(p16 INK4, p21, p53, Rb)をウェスタンブロットで確認し、検討する。 <結果1>PCOS女性の顆粒膜細胞で、老化細胞マーカーであるp16が強く発現している。 <結果2>デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)を投与して作成したPCOSモデルマウスの卵胞顆粒膜細胞で、老化細胞マーカーであるp16が強く発現している。 以上より、卵胞顆粒膜細胞において、細胞老化がPCOSの病態に関与していることが示唆された。
|