研究課題
1) 羊水塞栓症の臨床情報と血液検体の解析妊産婦コントロール、羊水塞栓症、常位胎盤早期剥離の血漿検体を使用して羊水塞栓症の血液凝固障害に関連する検討を行った。凝固マーカー(プロトロンビンフラグメント1+2)と線溶マーカー(プラスミン-alpha2プラスミンインヒビター複合体)の相関をみたときに、常位胎盤早期剥離では凝固マーカー上昇とともに線溶マーカーも上昇する正の相関が認められた一方で、羊水塞栓症では凝固マーカーの上昇が軽度であっても線溶マーカーが著しく上昇している症例を含むため両者に一定の相関が認められなかった。羊水塞栓症では凝固亢進に見合わない線溶亢進が生じていることがわかった。この原因の検索のため線溶マーカーの評価を行ったところ、羊水塞栓症ではtissue-type plasminogen activator (tPA)の有意な上昇とthrombin-activatable fibrinolysis inhibitor (TAFI)の有意な低下を認めた。この変化が羊水塞栓症における線溶亢進の病態に関与していることが示唆された。2) 肥満細胞・好塩基球細胞のcell-lineとトロンボエラストメトリを使用した実験系米国National Institute of Health (NIH)より供与を受けた肥満細胞株LAD2の細胞培養系について、培養、凍結、再培養は確立した。細胞内トリプターゼ濃度についても測定し、今後は薬剤添加実験を行い、脱顆粒反応を確認後にトロンボエラストメトリを用いた実験系を確立する方針である。
2: おおむね順調に進展している
妊産婦コントロール、羊水塞栓症、常位胎盤早期剥離の血漿検体を使用して羊水塞栓症の血液凝固障害に関連する検討を行い、データはそろったため論文作成中である。肥満細胞株を使用した実験系も基礎的な検討を行っており、おおむね順調に進んでいる。今後は動物実験についても準備を進めていく予定である。
羊水塞栓症や危機的産科出血における血液凝固障害を正常と比較検討するため、妊産婦コントロールとして妊娠後期、妊娠満期の陣痛発来前、分娩中、分娩後30時間以内の妊産婦のトロンボエラストメトリデータを前向き研究で行う。培養細胞株LAD2を使用した実験については、培養系は確立したため、アセチルコリンやC5a、Compound48/80の試薬添加による脱顆粒条件を検討し、実験系を確立する。動物実験については妊娠マウスを準備して研究計画書に記述した実験系の検討を開始する。
研究計画より実支出額が少なく済んだため当該助成金が生じた。次年度にはELISAキットの購入費の一部に充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)
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