研究実績の概要 |
月経困難症、不妊症などで生殖年齢女性のQOLを損ねる子宮内膜症には、有効な治療法が望まれている。しかしながら、子宮内膜症の原因は十分には理解されていない。子宮内膜症では子宮内膜組織が増殖することから、病変内で血管新生やリンパ管新生が増強して子宮内膜症を進展させる可能性がある。本研究では内因性トロンボキサンA2が子宮内膜症進展に役割と果たすことと、その制御機構には血管・リンパ管新生が関与することを実験的に調べた。ドナーマウスから採取した子宮内膜片を宿主マウスの腹膜に移植させる異所性子宮内膜症モデルを作成した。すなわち、トロンボキサンA2受容体(TP)ノックアウトマウス (KO)と野生型マウス(WT)それぞれから子宮内膜移植片を採取し、それぞれを宿主マウスであるKO、WTの壁側腹膜に移植した(移植片→宿主:KO→KO,WT→WT)。WT→WTの経時的変化を検討すると、移植14日で子宮内膜片は最大となり、以後漸減した。移植14日目の子宮移植片サイズならびに移植片内の血管・リンパ管占有面積はWT に比しKOで増加し、血管・リンパ管内皮マーカー(CD31,LYVE-1)発現も増強した。さらに血管・リンパ管新生因子産生も増加した。TP発現細胞を特定するために免疫二重染色を行なったところ、マクロファージに発現した。集積TP陽性マクロファージから血管新生因子(VEGF-A)およびリンパ管新生増殖因子(VEGF-C,D)が産生されるか免疫二重染色で検討したところ、マクロファージはVEGF-A,C,Dと共在した。このことから、移植片内のマクロファージにはVEGF-AおよびVEGF-C,Dの発現がみられており、血管新生因子、リンパ管新生増殖因子が産生されている可能性が示唆された。これらの結果からTPシグナルが子宮内膜症進展抑制と血管・リンパ管新生阻害に関与する可能性があると考えられた。
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