研究実績の概要 |
子宮内膜症における内因性トロンボキサンの関与とその制御機構を明らかにすることを目的として研究を遂行した。雌性野生型マウス(WT)C57BL/6マウスとトロンボキサン受容体(TP)ノックアウトマウス(KO)を用いドナー(WTまたはKO)マウスの子宮内膜移植片を、宿主(WTまたはKO)の腹膜に移植するマウス異所性子宮内膜症モデルを作成した(WT→WT,KO→KO)。移植後14日目の、移植片面積・移植片内の血管密度・リンパ管密度および、血管内皮マーカー(Cd31)やリンパ管内皮マーカー(Lyve1, Prox1, Vegfr3)および血管新生関連遺伝子(Vegfa)やリンパ管新生関連遺伝子(Vegfc,Vegfd)のmRNA発現は、WT→WTに比べKO→KOで増加した。免疫二重染色にてTPは移植片のマクロファージ(F4/80陽性細胞)に共発現した。また、移植片のマクロファージは血管新生因子(VEGFA)・リンパ管新生因子(VEGFC・VEGFD)を共発現した。また、KO→KOの移植片では抗炎症性マクロファージ関連遺伝子(Mr, Fizz1, Il10)のmRNA発現がKO→KOでより増加した。in vitroにおいて、LPS処置下の培養骨髄由来マクロファージをU46619で刺激すると、血管およびリンパ管新生関連遺伝子や抗炎症性マクロファージ関連遺伝子(Mr, Fizz1, Il10)のmRNA発現がWT由来マクロファージで減少したが、KO由来マクロファージでは減少しなかった。 マウス異所性子宮内膜症モデルにおいて、TP受容体シグナルを阻害すると、抗炎症性マクロファージから血管およびリンパ管新生因子産生が増加し、移植片の血管およびリンパ管新生が促進することで、子宮内膜症進展に関与することが示唆された。
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