研究実績の概要 |
口腔癌は進行癌で発見されることが多く、早期癌は5割程度にとどまる。治療成績の向上には、病変の早期発見および診断方法の確立が求められるものの、口腔癌の腫瘍マーカーとして信頼性の高いものは存在しないのが現状である。近年、細胞間コミュニケーションの担い手として、細胞外小胞の一種であるエクソソームが注目されるようになってきた。がん細胞由来のエクソソームには、がん細胞固有のマイクロRNAや表面タンパク、DNAなどが含まれ、かつ癌発症の初期段階から放出されていることなどから、様々な臓器で新規バイオマーカー探索の対象となっている。そこで、本研究では、タンパク質や脂質と結合することにより機能調節に働き、核酸とタンパク質に次ぐ第三の生命鎖とも呼ばれる糖鎖に注目し、体液、腫瘍組織などの臨床サンプルから抽出したエクソソームの網羅的糖鎖解析 を行うことにより、頭頸部癌に対する新規バイオマーカーの同定することを目的としている。 健常者の唾液サンプルにつき検討したところ、測定者間誤差はあまりないものの、エクソソーム回収までの保存状態によりフコース認識レクチンAOL,ALLなどで糖鎖パターンが異なる可能性が示唆された。また、年齢により男性ではグルコースやマンノースと特異的に結合するコンカナバリンA、フコース認識レクチンであるLotus Tetragonolobus lectinなどの、女性ではフコース認識レクチンであるLCAやマンノース認識レクチンであるCalsepaなどで糖鎖パターンが異なり、同年代でも性別により違いが認められた。
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