研究課題
頭頸部癌の中で特に中咽頭癌において、HPV陽性癌のマーカーであるp16免疫染色陽性癌は放射線や化学療法への治療反応性が高いといわれており、治療強度を落とした臨床治験が進行中である。しかしながら、p16免疫染色法は10-20%の割合で偽陽性があり、その偽陽性群(p16陽性/HPV陰性群)はHPV陰性群と同様、予後が悪い傾向にある。したがって、HPV関連癌を現行のp16のみで判定する手法には治療選択や予後の推測を見誤る危険性がある。そこで頭頸部HPV関連癌の判定に有用な安価で正確な検査方法を同定することを目的として、HPV関連癌では部分欠失という特異的な染色がみられp16との併用で診断精度の改善が期待できるRbの免疫染および細胞診残余検体や生検擦過検体を用いて産婦人科領域で保険適応となっているPCR検査/ハイブリットキャプチャー法によるHPV同定検査を行い、その有用性を検証する研究を計画した。2021年4月より九州大学病院と共同研究施設において、頭頚部癌が疑われた症例(特に中咽頭癌及び鼻腔癌、涙嚢癌)の39症例に対し、検体を採取し、DNA-PCR検査およびp16・Rbの免疫染色検査を施行した。これにより、p16とRbを組み合わせた結果とDNA-PCR(Tapman法、ハイブリッドキャプチャー法、リアルタイムPCR検査の3種検査)との相関関係がある程度判明した。Tapman法が最もHPV感染のパターンであるp16陽性・RB部分欠失の結果と相関する傾向にはあった。HPV-DNA検査の中でもTapman法の正確性が高い可能性が示唆されたが、判定不能の症例も1割程度みられたため、DNA-PCR検査単独での判定はできない可能性も示唆された。HPV-ISHが未施行であり、p16陽性Rbパターンが真に転写活性を有するHPV感染を認めるのか、p16陽性・Rb完全欠失の中にもHPV感染例が含まれているが、それらの検査結果との相関についての判定はできておらず、今後の研究課題である。
2: おおむね順調に進展している
目標研究症例まで10症例程度となったが、HPV-ISH検査が物品の到着の遅れおよび実験時間の確保不足により施行できていない。
症例の集積を進めるとともに、実験用品の到着をまち、HPVーISH検査を施行する。ISH検査およびp16・Rb免疫染色検査、DNA-PCR検査の結果の統計学的解析を行う。それらの結果を踏まえて、HPV感染同定のための正確性、簡便性に優れ、比較的安価な検査法の確立を目指す。
HPV-ISH検査キットの数量が十分に購入できていないため。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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