研究課題/領域番号 |
21K16835
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
伏見 千宙 国際医療福祉大学, 大学病院, 講師 (20623531)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 唾液腺導管がん / MSI / 癌免疫微小環境 / マイクロサテライト不安定 |
研究実績の概要 |
【目的】唾液腺導管癌(SDC)は稀な高悪性度唾液腺癌であり、比較試験を経た薬物治療は確立されていない。近年、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG3などの免疫チェックポイント分子を標的とした免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の有用性が様々な癌腫で報告されている。SDCを含む唾液腺癌でも徐々にICI両方が行われているが、その治療効果予測因子は確立していない。本研究の目的は、SDCにおけるMSIや癌免疫微小環境と、予後を含む臨床病理学的因子との相関を解析することである。 【方法】全国多施設共同研究で集積された症例のうち、175例の検体で本研究を遂行できた。免疫組織化学的(IHC)にミスマッチ修復タンパク(mismatch repair:MMR)(MLH1、MSH2、MSH6、PMS2)の発現をみるとともに、抽出したDNAからMSI検査を行い、MSIの有無を評価した。また合わせて腫瘍組織浸潤リンパ球(TILs)、およびIHCによるPD-1、PD-L1、CTLA-4、CD8、FOXP3、LAG3の発現も判定した。PD-L1についてはcombined positive score(CPS)とtumor proportion score(TPS)をそれぞれ算出した。 【結果】MSI高値、MMR 機能低下と評価された症例は認めなかった。一方、PD1、CTLA4、CD8、FOXP3、LAG3の高発現例は、組織学的高悪性度、N・M進行例、Ki-67公標識率を示し、予後不良との関連性が認められた。さらに、PD-L1高値例は、組織学的高悪性度で、予後も不良であった。一方、TILsと臨床病理学的因子との間に有意な相関は認められなかった。PD-L1とCTLA4を合わせて評価を行うと、2つとも高値の症例では、より予後が不良であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象症例のミスマッチ修復タンパク(mismatch repair:MMR)(MLH1、MSH2、MSH6、PMS2)、およびPD-1、PD-L1、CTLA-4、CD8、FOXP3、LAG3の免疫組織化学染色、抽出したDNAを用いたMSI検査、腫瘍組織浸潤リンパ球(TILs)の評価が完了した。感度分析による閾値設定、および臨床病理学的因子との相関関係、無病生存期間・全生存期間との統計学的解析もおおむね完了した。また多施設共同研究の協力施設所属医師による学会発表も行った。
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今後の研究の推進方策 |
全国多施設共同研究で集積された症例のうち、175例の検体で本研究を遂行でき、免疫組織化学的(IHC)にミスマッチ修復タンパク(mismatch repair:MMR)(MLH1、MSH2、MSH6、PMS2)の発現をみるとともに、抽出したDNAからMSI検査を行い、MSIの有無を評価した。また合わせて腫瘍組織浸潤リンパ球(TILs)、およびIHCによるPD-1、PD-L1、CTLA-4、CD8、FOXP3、LAG3の発現も判定した。PD-L1についてはcombined positive score(CPS)とtumor proportion score(TPS)をそれぞれ算出した。これらの結果をもとに、唾液腺導管癌手術治療における無病生存期間、全生存期間、病理組織学的所見および各種バイオマーカー、アンドロゲン遮断療法や抗HER2療法の奏効率、臨床的有用率、平均無増悪生存期間、平均全生存期間、ニボルマブ投与症例の奏効率、臨床的有用率、平均無増悪生存期間、平均全生存期間を検討する。 また研究結果を、国内学会(癌治療学会、頭頸部癌学会等)や国際学会(ASCO、IFNOS等)での発表を行う。さらには、適宜論文化を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
薄切未染プレパラートを用いてDNA抽出を行ったところ、かなり古い症例を中心に検体の状態不良の症例があり、検査予定症例数が見積もりより少なくなった。したがって薬品が設定より使用が少なかったことにより、次年度使用額が生じた。今年度もさらに研究を進めるにあたり必要と考えている。
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