加齢性難聴はコミュニケーション障害を引き起こし、うつ病や認知症の誘因となる。超高齢化社会を迎えた今、その予防や治療は喫緊の課題である。これまでの疫学調査で、加齢性難聴と虚血性疾患との関連が報告されているが、モデル動物が存在しないため、その病態や治療法は十分に研究されていない。我々は現在、スナネズミの頚部椎骨動脈にアメロイドコンストリクターを留置し、慢性内耳虚血を引き起こすことで作製可能な、加齢性難聴モデルの研究をすすめている。難聴の推移をABR等で経過観察をし、加齢性難聴の発症機序を組織学的、分子生物学的に明らかにすることを目的としている。申請者らはこれまでに、スナネズミ一過性内耳虚血モデルによる難聴研究をし、成果を収めてきた。その応用である本モデルの作製は実現性が高く、本モデルの病態を解明すれば、慢性内耳虚血の病態を把握できるとともに、あらたな予防や治療の開発につながると期待される。 これまでの加齢性難聴動物モデルは加齢動物や遺伝子改変動物が用いられることが多かった。一方で、疫学調査からは、遺伝的要因の他に、心血管系疾患、脳血管障害といった虚血性疾患と加齢性難聴との関連が示唆されており、内耳血流障害も加齢性難聴の一因と考えられている。しかし、慢性内耳虚血の病態に適したモデル動物はこれまでになかった。我々がこれまで確立してきた一過性内耳虚血モデルを応用することで、新たな加齢性難聴のモデル動物が確立できるとともに、加齢モデルや遺伝子改変モデルでは明らかにし得なかった病態の解明につながり、加齢性難聴に対する新たな予防法や治療法につながる可能性がある。
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