研究課題/領域番号 |
21K16846
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
萬 顕 札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (20792120)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 頭頸部扁平上皮がん / 微小環境 / がん線維芽細胞 / ACLP |
研究実績の概要 |
がん線維芽細胞(CAF)におけるACLPの機能解析:頭頸部扁平上皮がんの外科切除検体より繊維芽細胞を分離培養し、新たに2株のCAFを樹立した。これらのCAFにおいてACLPが高発現していることを、定量RT-PCRならびにウエスタンブロットにより明らかにした。CAFのACLPをノックダウンすることにより、細胞外マトリックス(ECM)再構成能が低下することを、collagen gel contraction assayにより確認した。またACLPのノックダウンが、がん細胞の遊走・浸潤の促進効果を阻害することを明らかにした。これらの結果からACLPはCAFの活性化に関わることが示された。さらにALCPノックダウンがCAFの遺伝子発現に与える影響を、マイクロアレイ解析した。その結果、ACLPノックダウンによりp53シグナルが活性化すると共に、細胞周期関連遺伝子の発現が抑制されることが明らかとなった。 ACLPと相互作用する分子の同定:V5タグ融合ACLP蛋白をHEK293細胞に強制発現させ、cell lysateを回収して質量分析を行った。その結果、ACLPと相互作用する候補分子23種類を同定した。 in vivoにおけるACLPの機能解析:これまでにACLPを過剰発現させたCAFと、ヒトがん細胞をヌードマウスに共移植することで、xenogtaft腫瘍形成が促進されることを明らかにしている。in vivo実験の最適化のため、がん細胞とCAFの比率を各種検証し、腫瘍内におけるCAFの観察に適した最適な比率を決定した。 頭頸部扁平上皮がんの臨床検体の解析:外科切除された臨床検体を用いた免疫組織染色から、ALCPががん間質に高発現していることを明らかにした。さらにI型コラーゲンの染色を行い、ACLPとI型コラーゲンの発現が強く相関することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床検体から新たなCAFを採取・樹立し、実験系を充実させることができた。またCAFにおけるACLPの分子機能解明の糸口となる結果を、マイクロアレイ解析から得ることができた。ACLPと相互作用する分子のスクリーニング実験を予定通り行った。またin vivoにおいてACLP高発現が腫瘍形成を促進することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
臨床検体からの正常繊維芽細胞ならびにCAFの採取と樹立を継続する。CAFにおけるACLPの分子機能をさらに検証すべく、ACLPがp53蛋白や細胞周期関連遺伝子に与える影響の検証を行う。また今年度得られた、ACLPと相互作用する候補分子について、解析を進める。CAFのACLP発現が、腫瘍形成ならびにリンパ球浸潤に与える影響を、in vivo実験により明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会出張が、全てリモートによる参加となったため、旅費を使用しなかった。また実験の大半を自分で行う事ができたため、人件費の支出がなかった。次年度は、学会出張ならびに、実験補助員の謝金として使用する予定である。
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