蝸牛培養細胞株(HEI-OC1)において、脂肪酸処理群(パルミチン酸(PA)+BSA:bovine serum albumin)、アミノ酸処理群(Gln)、Gls阻害薬群(BPTES)、Cpt阻害薬群(Etomoxir、perhexiline)、対照群(BSAまたは生理食塩水)でのミトコンドリア機能解析及びミトコンドリア骨格解析を行った。脂肪酸処理群ではOCR(酸素消費速度)は有意に上昇したが、FCCP投与後の最大OCRは上昇しなかった。一方、アミノ酸処理群ではOCRと最大OCRは、共に上昇した。アミノ酸はミトコンドリアエネルギー代謝基質としてGls2を介して非常に重要な役割を果たすこと、脂肪酸はCpt1cを介して主に脱共役剤として機能する可能性が示唆された。蝸牛培養細胞株に加え、マウス個体の蝸牛器官培養での評価系の開発を試みた。ミトコンドリア骨格に係るモータ結合タンパク質についての解析し、HEI-OC1のミトコンドリアダイナミックスにおいて、ミトコンドリア融合促進にはTrak1、分離には微小管脱重合が重要な役割を果たす可能性が示唆された。また、OCRはSyntabulinの阻害により上昇する傾向が見られ、ミトコンドリア代謝速度におけるミトコンドリア骨格の重要性が示唆された。小胞体ストレスとの関連に新たに着目し、基礎的な評価系について鉛障害を用い、小胞体ストレス・アポトーシス・ネクロプトーシスのマーカをqPCRにて評価検討し、アポトーシスは誘導されず、ネクローシスの誘導が観察され、HEPESのアポトーシス・ネクロプトーシスに対する保護作用が副次的に確認され、併せて論文発表を行った。
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