声帯瘢痕は重篤な嗄声を引き起こす。一度形成された声帯瘢痕を改善することは難しく確立した治療はない。声帯への間葉系幹細胞移植は有望な治療選択肢であ るが、拒絶反応の問題や腫瘍化の問題が未解決の課題となっている。近年、幹細胞自身ではなく幹細胞の分泌する物質に組織修復・再生効果があることがわかり、幹細胞が培養された液を治療に用いることで細胞そのものを用いるのと同等の効果が得られることが示された。培養液のみの使用であれば拒絶反応や腫瘍化の問題を克服できる。本研究はラット声帯瘢痕モデルにラット皮下脂肪由来間葉系幹細胞の培養液を注入することで一度形成された声帯瘢痕の修復が認められるかを検証する目的で計画した。本年度は、昨年度に引き続き各実験手技の確立と安定化を行った。ラット声帯を損傷して声帯瘢痕モデルを作る手技について安定化を行った。SDラットの皮下脂肪から脂肪由来間葉系幹細胞を分離する手技について、実験施設、器具の環境整備を行い、実施した。細胞分離手技の安定化を行った。また、本年度は、オールインワン顕微鏡と画像解析ソフトウェアの操作方法を習得し、ラット喉頭の組織学的な変化を検出する方法を確立した。昨年度の課題であった細胞培養環境の整備に取り組んだ。細胞培養のためのインキュベーター設備や培養液交換のためのクリーンベンチ、またクリーンベンチ内で使用する滅菌用ガスバーナー、ガスコンセント、などの確保に努めたが、設備費、場所の確保がままならず、研究代表者の異動期日となった。
|