研究課題/領域番号 |
21K16862
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
木村 優介 日本大学, 医学部, 助手 (50839074)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 先天性サイトメガロウイルス感染症 / 先天性難聴 / Chirp音ABR / 抗ウイルス薬 |
研究実績の概要 |
先天性CMV感染症児の聴力評価で従来のClick音ABRのⅤ波閾値のみで判断した際に、低音域に難聴のある症例の治療適応や難聴の重症度評価を正確におこなうことが難しく、経過をみていく際にもABRのⅤ波閾値の変化が先天性CMV感染症による遅発性・進行性難聴なのか、成長による聴覚伝導路の髄鞘化が進んだことによるものか、中耳腔貯留液の消失によるものか、抗ウイルス薬の治療効果によるものかどうかの判断が非常に困難である。現行のABRのⅤ波閾値のみの聴力評価では治療適応と治療効果判定法に限界があると考える。 2021年度は研究を開始するにあたり、実施施設である日本大学板橋病院の臨床研究倫理審査委員会での承認を得た。(整理番号RK-210914-4) 研究実施計画に則り、症例登録期間が2年間である。2021年度は4例の先天性サイトメガロウイルス(以下CMV)感染症の患者の登録をおこなった。症候性先天性CMV感染症が3名、無症候性CMV感染症が1名である。4例に関しては研究の同意を取得し、スクリーニングとして、Click音ABR、Chirp音ABR/ASSR、DPOAEをおこなった。鼓室内の評価に関しては、中耳ファイバーでの観察、Tympanometryを施行している。4例に対してはフォロー期に移行しており、定期的な検査をおこなう予定である。症候性CMV感染症3例は抗ウイルス薬である、バルガンシクロビルを投与しており、Chirp音ABR/ASSRを用いて、治療効果判定をおこなう予定である。現段階では、発表や論文化のためのデータ集積をしている。また、2022年度も引き続き症例の登録をおこなう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の登録症例数は2年間で20例であった。年間10症例の先天性CMV感染症児の登録を予定していたが、2021年度は4例であった。日本における先天性CMV感染の発生頻度は0.31%で、新生児1/300人が先天性感染を起こしていると報告されているが、出生時に先天性CMV感染症を疑う症状がない場合は新生児尿でのCMV核酸検出は行われていないため、多くの軽症の症候性や無症候性の先天性CMV感染児が出生時に診断されていないと思われる。現段階では、全出生児に対するCMVのスクリーニング検査は行われていないため、当院のみの対応では限界があり、近隣の産院含め、先天性CMV感染症を疑った際には積極的な検査を行い早期に紹介していただけるような体制作りを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究を遂行する上での課題としては、登録する症例数を増やす必要がある。日本大学医学部附属板橋病院では、当院小児科・産科の協力のもと新生児聴覚スクリーニング(NHS)でrefer(要再検査)になった場合と低出生体重・小頭症等の先天性CMV感染症を疑う児の場合、生後21日以内に新生児尿を用いたCMV検査を行っている。NHS refer児に対してCMV検査を行っており、難聴以外の症状がない先天性CMV感染症児も確実にスクリーニングできる体制が整っている。しかし、近隣の施設ではまだNHSでreferであっても、CMV検査をおこなっていない施設もあり、先天性CMV感染症の診断がされないこともあり、連携施設には先天性CMV感染症を疑った際には積極的な検査を行い早期に紹介していただける体制作りを進めている。 2022年度は5例の新規登録を目標とし、2023年度も引き続き登録期間とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
症例登録件数が伸びず、近隣病院との協力体制作りに注力していたため、次年度使用額が生じた。使用計画としては、施設設備費の購入を予定している。今後、施設設備の購入と発表等に関わる費用を計上していく予定である。
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